第14話

「ほらぁ、やっぱりそう見えるんじゃない」


と私の言葉にビアンヌは彼の背中を嬉しそうにバンバン叩き、彼は心底痛そうな表情を浮かべる。


「いってぇ……ったく、どこの親がこんな力で叩くんだ。それよりこの子は客として連れてきたんだ。住むとこ見繕ってやってくれ」


彼は背中をさすりながら設けられたテーブルから椅子を引いて、座るように促されたので、ありがとうございますと頭を下げてそそくさと座る。


「もう、それならそうと早く言ってよねぇ」


と向かい合うようにビアンヌも座り、意気揚々と要望を聞くためのヒアリングシートを広げる。


「後は頼んだ。ビアンヌはまぁこんな感じだが仕事は出来るから安心しろ……ってそんな顔で見るなよ」


帰ろうとする言動に思わず驚いてしまう。短い時間の中で圧倒的な安心感からまさか急にいなくなってしまうなんて思ってなかった。しかし、そもそも十分過ぎるほど付き合ってくれたのだ。これ以上引き留めてしまうのは申し訳ない。


それでもしょんぼりしてしまい、すみません……と俯くと、


「……ああ、もう分かった分かった。ちょっと用事済ませたらまた戻ってくるから。それまでビアンヌに良いとこ見つけてもらいな」


慰めるように私の頭にぽんぽんと優しく手を置く彼の言葉にぱっと顔を上げる。


「あっ、ありがとうございます!」


「良いのよ、どうせ暇なんだから」


彼が何か言うより先に、ビアンヌがニコニコとしながら答える。


お前なぁ……と睨む彼にほら、早く用事済ましてらっしゃいよとひらひらと手を振るので、はいはいと中身のない返事をして彼は店を出る。


「すっかり懐いているのねぇ」


彼の背中を見送っていると、ビアンヌがテーブルの上で両手に顎を乗せて嬉しそうに話す。そうなんですと強く頷き、暴漢から助けてもらったことや、半ば強引なお礼の食事に付き合ってくれた上に、ここまで案内してくれたことを話すとビアンヌはうんうんと頷く。


「見た目はツンツンしてて怖そうなんだけど面倒見の良い子なのよぉ。あの子の優しいとこ分かってもらえて嬉しいわ」


と我が子を自慢するような口ぶりのビアンヌにつられて笑顔になる。


「いけない、話に夢中になってたらあの子に怒られるわ。リリアちゃんのお部屋絶対良いところ見つけるからね!」











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