第13話

食事を終え、やっぱり放っておいたらまた変なところに迷い込みそうだからと、目的地まで案内してくれることになった。助けてもらってばかりで申し訳なかったがその可能性は大いにあるので、お言葉に甘えることにした。


住むところを仲介してくれる店までとお願いすると、それなら信頼できる知り合いがやってるところがあるとのことだった。


道すがら、ここからは船で何日もかかる地方から出てきたばかりで、住むところが決まれば、働き口も見つけたいことを話したり、さっきのお店で幼い女の子がお母さんと手をつなぎながら私たちの横を通り過ぎる時に、小さな手を振ってばいばいと言ってたの可愛かったですねなんて話を、彼は相槌を打ちながら聞いてくれていた。


ここだ、と彼が止まると、透明なガラス張りの壁に部屋の情報が載った紙が張り出されている明るいオープンな雰囲気の店に到着した。


「いらっしゃーい、あら!久しぶりじゃない!……って女の子連れてくるなんて珍しいわね!あなたいくつ?名前は?」


入ってきた彼を見た途端、コツコツと軽やかなヒールの音を立ててはしゃいだ様子で近づいて来る人物が、私を見た途端に驚いた表情を見せる。


「は、初めまして……歳は十六です、名前はリリア・ディミローと言います」


その勢いに気圧されながらおずおずと言うと、その人は彼の肩にぽんっと手を置きうんうんと頷く。


「ずいぶん可愛らしい子捕まえてきたわね、挨拶もちゃんとできてえらいわ。お母さん、お付き合いを認めます」


「誰がお母さんだっ!」


肩の手をぺっと振り払う。


「えっ、お母さんじゃないんですか?」


てっきりそうなのかと思っていたので聞くと、


「そんなわけない!」


食い気味に返事が返ってきた。


「そんなわけないなんてひどーいっ!反抗期なのかしら?あ、あなたもお母さんって呼んでいいからねっ」


太いアイラインと長いまつ毛が印象的な瞳で、ばちんっと音がしそうなウィンクをされる。彼は大きな溜め息をつく。


「ややこしくなるからちょっと黙っててくれ。良いか、この人はお母さんじゃなくて昔から世話になってる知り合いで名前はビアンヌ……男だ」


改めて見てみると、元の身長に高いヒールがプラスされて二メートルはあるんじゃないだろうか。私の隣にいる彼も背が高いが、そんな彼と頭一つ分違うように見える。鍛え抜かれた腕や脚がタイトな深紅の煌びやかなドレスから覗いている。耳には大きな金の輪が連なった豪華な耳飾り。


「もしかしたら筋肉質で声が低めなお母さんなのかなと思いました……」

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