モヤモヤ
「ここは……僕と君が初めて出会った場所」
「また何か思い出したの? 」
いつの間にか隣に立っていたサリーに声をかけられ、僕は静かにだけど驚いた。彼女の問いに応えようと僕はゆっくりと言葉を吐き出した。
「水に触れたらまた思い出したんだ。ここは僕が初めて君に会った場所。君はさっき見た大きな街の出身で、喘息を治すためにこの村にやってきたんだ。ここで初めて会った村人が僕だったんだ……」
話している途中で僕の頭の中に疑問が生まれた。彼女は小川の水を触っていたが、昔のことを思い出したりはしなかったのだろうか。
「君は……何か思い出さなかった? 」
「え? 」
「水を触った時」
反応からして、彼女は何も思い出せていないようだった。
「私は……何も思い出せなかったわ」
そう言いながら彼女は足元の小川の水を掬った。澄み切った透明の水は彼女の両手からこぼれ落ちる。
「そう……か……」
僕は少しモヤモヤした。ここは2人が初めて会った場所で、全てが始まったであろう場所。大事なところなはずなのに、彼女はまるで何も思い出せない……どうして僕だけが過去を思い出せて、彼女は思い出すことができないのだろうか。彼女は……僕との思い出なんてどうでもいいと思っているのだろうか。それだったらどうて、彼女は僕についてきてくれるのだろう。
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