村の小川

 翌日、僕ら2人は再びスート村の集落を訪れ、村の南にある一本道に向かった。すぐそばには小川が流れており、とても細い道を抜けると開けた場所に出た。ずっと向こうに、この村にはない、立派な家……いやあれはお城かもしれない。こんな遠くからでも存在感を見せつける建物がいくつか見えた。きっとここよりも栄えた街があるのだろう。

「見てダン!素敵なお城!私あんな立派な建物、初めて見たわ! 」

 彼女はどんなものにでも興味を持ち、いつも楽しそうにしている。彼女の側にいればどんな時も幸せな気持ちになるんじゃないかと思える。

 僕が夢に見る人間の頃のサリーも、ゴーストのサリーも、容姿や立ち居振る舞いを見ているとこの村の質素な家よりも、今遠くに見えるとても豪華なお城の方が似合っているように見える。今日は日が暮れてすぐに村に来たため、ここに住む人間たちの様子を見たが、サリーのような青い瞳にブロンドの髪の人間なんていない。彼女はもしかしたらこの村の出身者じゃないのではという考えが僕の中にあった。

「ねぇダン!ここのお水、冷たくて気持ちがいいわ」

 そんなことを一人で考えていたらサリーが呼びかけてきた。彼女は気がつくと小川の中に足を入れている。

「さ、寒くないの? 」

 この辺りはただでさえ山の麓にある。それに今はすっかり秋めいていて、吹く風がとても冷たい。人間ほどではないにしても、ゴーストだって寒さを感じるのだ。

「確かにちょっと冷たすぎるけど……でもなんだかとても気持ちいいの!ダンもちょっとだけ触ってみたら? 」

 小川ではしゃぐ彼女はまるで純粋無垢な少女のようだ。いや実際少女なのかもしれない。僕は彼女に言われるがままに小川の側にかがんで右手を伸ばし、流れる水に触れた。水の流れが右腕をつたい、頭の中に何かが流れ込んできた。

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