スート村集落
僕たちゴーストが住む場所から南西にしばらく進んだところにスート村の集落がある。村にはいくつかの茅葺き屋根のうちが並んでいる。家の中はランタンで明るく照らされ、村の外には人影ひとつ見つけることもできなかった。
「生きている人間の空気を感じるわ。人の住む場所にこんなに近づいたの、私初めて」
サリーはまるでピクニックにでもやってきた子供のようにあたりをキョロキョロ見渡している。
「こんなところに僕たちは住んでいたのか。なんだか信じられないな」
暗い棺の中で寝るようになって一体どれくらい経つのだろうか。死んだ直後、おそらく戸惑ったはずなのに、今ではもうそこで寝泊まりする以外のことが考えられない。
何か夢の中で見た風景のヒントにならないかと、僕もサリーのようにあたりを見渡す。僕はそこでなぜか、一件のこじんまりとした家から目を離すことができなくなった。
「どうしたのダン? 」
家しか見えていなかった視界に突然不思議そうな顔をして覗き込んでくる彼女の顔が現れて僕の心臓は跳ね上がった。そんなに集中していたのか、それとも彼女の顔が見えたからなのか……
「い、いや……なぜかあの家が気になってしまって」
平静を装い、彼女の言葉に返事をする。ふーんと言いながらサリーは僕が見つめていた家に近づき、様子を伺った。部屋の中はもう暗く、ここの住人はすでに就寝しているようだった。暗闇に慣れているとはいえ、家の中の暗闇は深く、どんな人が住んでいるのかは僕にはわからなかった。
「これは何かしら? 」
サリーはドアにかかっている何かを発見した。ドアノブにかけられていたのは動物の骨……というか大きな牙だった。
「動物の牙? 」
なぜか僕はそれに見覚えがあった。
「ねぇ。よく見たらこれ、何か書いてあるわよ」
彼女はそう表現したが、しゃがんで角を見ると、それは書いてあるというよりは刻んであるようだった。僕は刻まれた文字を見ようとその角を手に取った。すると突然、頭の中に衝撃が走った。僕は思わず目を瞑った。
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