真上から降り注ぐ柔らかな日の光。青々とした若葉は陽光を目一杯浴びてとても気持ちが良さそうだ。ここはどこだろう、と僕はあたりを見渡す。目の前には透明で、冷たそうな水が流れている。遠くの方に人影が見える。柔らかそうな生地でできたワンピースを身にまとう女性のようだ。彼女はどんどんと近づいてくる。彼女が近づけば近づくほどに僕の心臓はバクバクと心拍数をあげる。なんだこれは。なんだか顔も熱くなる。今見たばかりの女性なのにどうして?それとも……僕は以前、彼女に会ったことがある?


「……!」

 そこで僕は目を覚ました。狭くて暗い棺桶の中。鼻に届く湿った土の香りを嗅いで、あぁ、僕は今日も目覚めたんだなと気がつく。土の中から地上へと上がる。なんだか蝉の幼虫みたいだな、と毎回思う。まぁ彼らは僕らと違ってちゃんと土をかき分けて外の世界へと飛び立っていくのだけど。地上へ出ると静かな暗闇が広がっていた。空は灰色の雲で覆われていて、星や月の姿を確認することはできなかった。

 最近、よく夢を見るようになった。今までそんなことなかったのに。しかも毎回似たような夢だ。お日様の照らす中、僕は小川や森にいて、いつも同じ女性が駆け寄ってくる。ブロンド髪の毛を靡かせた素敵な女性。彼女が近づくたびに僕はドキドキする。そこで夢は途絶えてしまう。一体この夢はなんなんだろうか……

 気分ではないが、この辺りのゴーストたちが集まる溜まり場に向かう。どうせいくところもやることもない身だ。あそこに行けば気くらい紛れさせることができる。

「あらダン。なんだか浮かない顔をしているわね。どうしたの? 」

 ブロンドの髪をふわふわさせて、大きくて丸い、澄んだ青色の瞳をキラキラさせながらそう僕に尋ねてきたのはサリー。彼女も僕と同じゴーストだ。

「やぁ、サリー。なんでもないよ。ちょっと考え事してた」

「ぼーっとしてると壁にぶつかっちゃうわよ! 」

 ふふふと彼女は笑みを浮かべると、じゃあ先にいくわね、と手を振って行ってしまった。彼女はいつでも天真爛漫で、周りの空気を明るくしてくれる。別に何が解決したわけではないけれども、彼女と話したおかげで随分と肩の荷が降りたような気がした。

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