もうひとつのプロローグ



「契約妖精086459632」

鋼のように鋭く、重い声が脳を支配する。

「証明してみせるというのか?私たちが築き上げてきたヒトと妖精の均衡を、そこにいる男が崩しはしないと。脅かしはしないと」

「ええ」

支配をどうにか振り切り、あたしは不敵に笑ってみせた。

「証明してみせます、大公シーシアス様。あたしとこの男が協力してひとりの女の子の恋を実らせたことを」

そのままレンを振り返る。

三日月の目はさらに細められているけれど、光は未だ失われていなかった。

「……ふん。ティターニアによれば、人間界では『恋愛相談をした相手のことを最終的に好きになってしまう』などという俗説もあるようだが」

再び脳が揺らされる。



「二人でひとつの恋愛相談を引き受けた貴様らは、最後にどこへ想いを向けるのだろうな?」


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