第72話 八雷神2
本殿の様子を見てフシミが拍子抜けしたように言う。
「お、思っていたより退魔師がいないですネ」
「それは我々の本命が平将門の首塚や関連の神社だと思っているからだろウ。それにすべての神社へ配置する退魔師が足りていないからダ。ここに四名しか居なかったのが何よりの証拠ダ」
カシラは答えながら、呪符ケースから封神呪符を十数枚取り出した。
封神開放すると十数名の霊が解放されて社の前に現れる。
穢れの無い軍人たちの霊が隊列を組んで社へと向かう。
続けて封神開放した呪符から育った大きい
社の霊的な扉が開くと、浮遊する
神気で光る社の扉の中へ三つの
急速に神気が縮小していき、一度大きく揺らぐと消失した。
地脈に穢れの杭が打ち込まれ、震度五弱の地震が東京で起きた。
ナルヤがカシラに確認する。
「次は鳥居に細工して黄泉平坂へ繋げるのですネ?」
「そうだナ」
「オレがやりましょウ」
中門鳥居の両柱に呪符を貼り、準備を整える。
刀印を結び唱える。
「鬼門死門を開くは冥府の道。冥界府の
中門鳥居の内側は空間が捻じ曲げられて黄泉平坂と繋がる。
カシラたちは鳥居をくぐると黄泉平坂にある大きく開けた場所へ出た。
その場所の正面に大きな岩、瘴気で枯れかけている桃の樹があった。
死の門を開けたことで、東京の瘴気や陰の気が門の中へとゆっくり流れ込む。
黄泉平坂の瘴気が濃くなると、桃の樹の神気が弱まり自身を守るだけの微弱なものとなった。
カシラは数珠を取り出して役割を伝える。
「クロスケ、ワカコ、ナルヤは表に出て退魔師の相手をしロ。他はワタシを含めて儀式を行う」
「オレは納得いかなイ。退魔師の相手をさせてくレ。“強敵となる退魔師の駆除を任せる”と、約束したはずダ」
「……クロスケと代わって退魔師の相手をしロ」
ライカは喜んだ。
名指しされた三匹の鬼は鳥居を門とした入り口を抜けた。
カシラたちは香炉を中心に囲んで儀式を始めた。
香炉に火を入れ、独特の香りと煙が立ち込めた。
五匹の鬼は九字護身法の印を結んで唱える。
「「「「「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前」」」」」
数珠を手に掛けて合掌してから、数珠を回す。
――じゃらり、じゃらり……。
儀式に合わせて血の魔法陣が赤い光を放ち、五匹の鬼に東京の霊力が繋がる。
詠唱に合わせて再び九字護身法の印を結んでいく。
「「「「「
東方には
詠唱が終わった直後に大きな音が鳴る。
――ガガンッ!
それを確認したカシラたちは詠唱を続けて繰り返す。
◆ ◇ ◆
魔法陣の情報が神社本庁の警備本部に伝わる。
『山野線を利用した魔法陣を確認! 東京で術式が展開しています!』
「本部、了解。……各員へ通達。北斗七星の陣を発動する!」
本部長から通達された。
平将門の首塚を含めて七箇所ですぐに準備を行う。
集中して手を合わせて
「掛けまくも畏き
国々に怪しき
掛けまくも畏き――」
各社と首塚の七箇所を霊的な光が線を結び北斗七星の形となった。
山野線の魔法陣と交差する箇所では、干渉し合ってラップ音が鳴る。
しかし地脈が瘴気で穢されて本来の力を発揮できずに陣が完成した。
『魔法陣を打ち消すことはできていない! 繰り返す、魔法陣は消えていない!』
「本部、了解した……」
神宮本庁は手詰まりとなった。
本部長は決断した。
「北斗七星の陣の警備班に連絡。各班は陣の警護を止めて靖国神社に急行せよ!」
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