第70話 集う退魔師
夜が涼しくなった夜の公園で直樹と言美が対峙していた。
言美が二枚の呪符を呪符ケースから取り出して唱える。
「雷となって撃ち貫け! 急急如律令!」
木行呪符が効果を発する前に直輝が言葉にする。
「桑原、桑原!」
呪符から放たれた雷は剣先の手前で四散した。
直輝は走って距離を詰める。
続けて言美は唱える。
「火球となれ! 急急如律令!」
その詠唱を聞いた直輝は、足を止めて水の構えである中段に構えた。
水のオーラが祓い刀に宿る。
放たれた火球に向かって刀を振い、火球を消し払った。
禹歩を踏み、言美の胴体に刀が触れる前に止まる。
言美が両手を上げて言った。
「参りました。ここまで出来れば、もう教えることはないわね」
納刀しながら呼吸を整えると直樹は笑顔をみせた。
少しなりとも言美は感心した。
直輝が話を切り出す。
「靖次先生から依頼の話があったよ。神宮本庁から玉兎会の鬼を討伐する協力依頼……」
「その話は知っているわよ。東京に現れて神宮本庁の退魔師と戦いになって欠員が出たって、話題になっている。それで人員が不足したから外部に依頼しているの」
欠員の意味を直樹は理解している。
決意に満ちた瞳で言う。
「……僕は受けることにしたよ」
「分かっているわ。頑張りなさい」
決意を受け止めて言美は送り出すことを決めていた。
◆ ◇ ◆
いつものように武宮家の道場に直輝たちが集まる。
しかし、今回はメンバーが多かった。
僧侶の高野、シスターのイゾルデがいた。
座布団に足を組んで座っている高野が直輝に話しかけた。
「稲葉君、久しぶりだ」
「はい、高野さん。どうして、ここに参加しているのですか? 仏教の関連施設や管轄区域ではなく、神宮本庁の依頼ですよ」
「ふむ。本来はこの申し出は受けなくても良かったのだが、今回の鬼は放置してはおけない。東京にいる檀家で小型の妖魔が増えて、祓いに出ているほどだ」
「……なるほど」
高野の隣で正座して座布団に座っているイゾルデと視線が合った。
イゾルデが会話に加わる。
「……教会も危惧している状況です。そういう事情もあって、参加しているわ。東京周辺の悪魔に囚われる人が増えている。原因を取り除かなければならないと思うわ」
「確か、古河神父でしたっけ? 止められたりはしないのですか?」
「神父様には理解を得て、ここにいますよ」
ご心配なくといった感じで答えた。
高野が笑って言った。
「宗教の垣根を越えて共闘とは面白いな」
靖次が道場に現れ、上座に腰を下ろした。
会話やざわめきが収まる。
一礼してから靖次が全員へ向けて話す。
「おれの申し出に集まってくれて、礼を言う。神宮本庁から
おれの弟子は
みんなが頷き、決意を示した。
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