第68話 情報共有


 武宮家の道場に直輝たちは集まった。


 ここに百地の姿もある。


 百地は靖次に八枚の写真を渡した。


 靖次が直輝にその写真の内、一枚の写真を見せた。


「この男に見覚えがあるか?」


「この男! 鬼の陰陽師です!!」


「やはり、そうか……」


 驚く直輝をそのままに靖次がみんなに向けて言った。


「結論から言って、玉兎会ぎょくとかいは鬼の陰陽師が率いる鬼の集団だった。おれの爺様の手記や資料、ここにいる百地さんのおかげでこの結論に至った」


驚いていた直輝は落ち着いてお願いした。


「……先生、順を追って説明をお願いします」


 頷いて靖次は説明を始めた。


 玉兎会ぎょくとかいはかつての陰陽寮の暗部組織や政府の政策で廃止となったことを不服として、鬼を使って反乱を起こした。


 そして反乱は失敗したが、大震災が起きて甚大な被害が起きてしまった。


 震災の混乱で鬼の討伐はできず、行方が分からなくなったことを伝えた。


 直輝は確認する。


「じゃあ、その時の鬼が今の玉兎会ぎょくとかい?」


「そうであろうな。おそらく、術者は式神として使役していた鬼に喰われたのだろう。これで今の玉兎会ぎょくとかいが、今は失われた術や式神を使えることが納得できる」


 靖次の言葉に鬼の陰陽師と対決した時のことを思い出す。


 靖次の意見に納得できた。


 気になって御鏡が靖次に質問する。


「それで、その鬼の正体は分かったのですか?」


「……ああ、鬼の集団は八雷神やくさいかづちのかみだ! 爺様の手記に記載があった」


「黄泉の鬼……」


御鏡は呟いた。


その言葉を聞いた結花は御鏡に尋ねる。


「その、黄泉の鬼について教えてもらえますか?」


「いいとも。古事記などにも出てくる古い鬼だ。

 大雷おおいかづち火雷ほのいかづち黒雷くろいかづち裂雷さくいかづち若雷わかいかづち土雷つちいかづち鳴雷なるいかづち伏雷ふしいかづちの八匹の鬼を八雷神やくさいかづちのかみという。

 伊耶那美神いざなみのかみが全身に雷として纏っていて、伊耶那岐神いざなぎのかみが黄泉から逃げ出すときに追手となった」


 簡単に説明した。


 続けて莉緒が靖次に質問する。


「その鬼の目的は何なのでしょうか?」


「それは分からん。喰った術者、玉兎会ぎょくとかいの考えを引き継いでいるのか。それとも黄泉の鬼として活動しているのか」


「では、私たちはまた後手に回るのでは?」


「……いや、神宮本庁や他の退魔師にも玉兎会ぎょくとかいのことを連絡してある。我々も含めて、みんなで玉兎会ぎょくとかいを討伐対象とできた。鬼どもの好きにさせることはないだろう」


 希望を込めて靖次が言った。


 直輝は気が付いて声を上げた。


「写真があるってことは、玉兎会ぎょくとかいの拠点でも分かったのですか?」


「すまん。それは俺がヘマをしてダメになった」


「えっ? どういうことですか?」


 戸惑う直輝に謝って百地が報告した。


「鬼を見張っていたら、人として使っていた玉兎会ぎょくとかいの拠点を見つけた。目的を知るために忍び込もうとしたが、見つかって逃げたんだ。


 その後で武宮家の退魔師と確認したが、すでに放棄されていた。あいつら、成長した禍津日まがつひを集めていた活動も止めている。


 今はどこを拠点にしているか分からないんだ」


「だが、百地さんのおかげで人としての姿を写真として捉えることが出来た」


 靖次が助け舟を出して、八枚の写真をみんなに渡した。


 結花が感想を漏らした。


「全然、鬼に見えないわね……」


 頷いた直輝は鬼の陰陽師である男の写真を食い入るように見た。

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