第66話 百地の調査1
人払いの術を張った夜の公園に男女の姿があった。
夏用のビジネススーツを着た五十代男性が呪符を取り出して唱えた。
「白虎金神招来! 雷となって敵を打て。急急如律令!」
蔦に絡めとった黒鬼へ電線からバチバチッと雷が降り注ぐ。
鬼の断末魔を上げ、赤黒い煙になった。
後には大きな
封神呪符を指に挟んで取り出し、刀印を組んで詠唱した。
「
弓削が男に近寄って言った。
「芦屋さん、こっちも終わったよ」
手に持っている封神呪符を渡して伸びをした。
芦屋は呪符をしまうと弓削に言った。
「弓削たちのおかげで十分に集まったな。これで次の段階に進められる」
「ふふ。早く最終段階にならないかしら」
楽しそうにする弓削の声を聴きながら、芦屋は人払いの術を解いた。
◆ ◇ ◆
百地はネイビーブルーの半袖シャツに黒ズボンという夜に目立たない恰好をしていた。
そして隠形を使い、木の陰から様子を見ていた。
(当たりだ。黒鬼を付けたのは正解だったな)
封神呪符で
(本当に
人払いの術を解いた二人の後を付け始めた。
◆ ◇ ◆
百地は停車した車の中で、携帯を取り出して電話を掛けた。
『司君、百地だ。これまで調べた
『分かりました。で、どうするのですか?』
『実は雑居ビルの事務所に忍んで盗聴でも仕掛けられればと思っている』
『何を勝手に危ない橋を渡ろうとしているのですか』
呆れた声で御鏡は答えた。
『鬼の陰陽師の男、似た人物もいる。俺の感じゃあ、あいつ等は鬼の集団だ。ただどう見鬼しても人間にしか見えないのが悔しい。盗聴ならその証言を漏らすこともあるだろう』
『じゃあ、もっと慎重な手を考えてください』
『いや、割といいと思っているのだが?』
御鏡が電話先でため息をついてから、一応聞きましょうと答えた。
『
盗聴器を仕掛けてしまえば、あいつらの目的も分かるというもの。先手を打てることもできるだろう』
目的が分かることはとても大きい。
百地の言う通り鬼の集団なら、退魔師で周囲を囲んで祓うこともできるかも知れない。
『俺も命は惜しいからな。危険になれば逃げるさ』
『……俺がどうこう言っても、やるつもりでしょう?』
『そうだな。盗聴の際に呪符の一つでも入手できれば、高値で売れる』
『俺から言えるのは、気を付けてください』
『ああ、上手くやってみせる』
それなりの自信を持った声で答えて、電話を切った。
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