第55話 死食鬼3
三匹の死食鬼は坊主頭に二本角が生えて、死者のような青白い顔と肌色。
背丈は一般的な人の大きさだった。
指先は黒く汚れていて、伸びた爪やつめの間にも黒い筋が見られる。
日本では死者の象徴である白装束を朽ち汚れた状態で着ていた。
直輝たちが構えて動き出す。
神父は瓶に入った聖水を取り出し、グールへ浴びせた。
ジュッとグールの肌を焼き、男性から離れた。
イゾルデが祝福された短剣を抜きグールと男性の間に割って入る。
神父が男性を引きずって、グールから遠ざけた。
それに合わせて直輝と結花が斬りかかり、一匹ずつグールと対峙した。
首から下げている十字架を掲げてイゾルデが祈った。
「東方に聖ラファエル、西方に聖ガブリエル、南方に聖ミカエル、北方に聖ウリエル。大天使たちよ、悪魔が人々を害することないようお力をお貸しください」
光の線が幾つもの十字架の印を描き、祈った四方を囲む。
教会の大きさに合わせた四角柱の結界を張り、光の線は消えて見えなくなった。
ロザリオが結界の保持を補助する。
――
悪魔をその場に留める立体型結界。
使用条件に十字架やロザリオなどの道具を用いて、術者が結界内で保持する必要がある。
――――――――
切り傷や聖水で肌を焼いたグールの傷がみるみるうちに塞がり、戻っていく。
「グールって、傷の塞がりが異常に早い!」
「グールの厄介なところは、その再生力と爪の毒よ。直接、核を狙うのが効率的なのだけど、場所が分かれば……」
結花の感想にイゾルデが短剣で応戦しながら教えた。
御鏡が胸の鏡を表に返してグールを視る。
「首を狙え! 核は、そこにある!」
その言葉に莉緒が神の弓を構えて、狙い易い直輝が相手しているグールを狙って矢を放つ。
グールが左腕を振り上げて爪で矢を弾き落とす。
直輝はその隙をついて、グールの左腕を切り落とした。
「ぐああアァァァ! うぉオ、オレレレの腕をオォォォ!」
切り落とした腕は再生されなかった。
発狂気味のグールは長椅子の上に飛び乗り、椅子を渡り走って莉緒に迫った。
御鏡が咄嗟に木行呪符を使う。
「絡み枝となって敵を阻め! 急急如律令!」
近くの長椅子を分解し、床から幾つもの絡んだ枝へ変換して呪符は消える。
籠のように絡んだ枝がグールを囲んで動きを止めさせた。
莉緒の短い悲鳴を上げたが、グールの爪は莉緒の手前で止まり、宙を切り裂いた。
陽の構えで回り込んだ直輝は長椅子を踏み台にして飛び上がった。
祓断ちでグールの首を枝ごと切り落とすと、グールは黒い煙となって霧散する。
「まずは一匹!」
結花は直輝の声に頷いて、グールの攻撃を捌きながら二歩後ろへ下がる。
脇突き構えに変えて姿勢を低くした。
グールは叫びながら結花へ歩み寄る。
「殺したナッ! うぉオレもお前を殺ししして、お前の仲間に悲しみみみを与えるうウゥ!」
結花は動揺せず、胴への突きを放つ。
しかし突きはグールの爪で防がれ、爪が攻撃に転じる。
結花は素早く元の構えに戻して二段突きを行った。
二段目の突きは首元を狙った変化したものだった。
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