第18話 赤い樹6
後日、御鏡が費用や報告書などを渡すため道場に三人が揃った。
御鏡が来ると、直輝と結花は稽古の手を止めて道場にある座布団を持って集まった。
御鏡は持っている封筒を靖次に渡した。
「これ、報告書や経費などの書類です」
「確かに受け取った。こちらも武宮家の清補班の後処理が終わり、病院の患者も症状が治ったと連絡があった。これで依頼はめでたく完了だ。改めてお疲れ様だった」
依頼完了の報告を受け、直輝と結花は自分たちの初仕事をやり遂げて喜んだ。
結花は気になっていたことを聞いた。
「お爺ちゃん。討伐のあとに大体の話は聞いたけど、壊れたお地蔵様はどうなったの?」
「あのお地蔵様はおれの知り合いの坊さんに連絡を入れ、お
結花はそれなら良かったと微笑んだ。
しかし靖次は不機嫌そうに言った。
「建設業者の不手際で、最初に地鎮祭が行われなかった。事前に調べていればな……」
「そうだけど、それを言っても仕方ないよ。お爺ちゃん、患者さんが酷いことにならなかったのだから、良かったじゃない」
結花が嘆く靖次を
先日の戦いで直輝が疑問に思っていたことを御鏡に尋ねた。
「そういえば……どうして、赤い樹までの道が作れたのですか?」
「最後の
最初は土地から視える陰の気で、地中にある根が分からなかった。しかし地面から人のオーラの流れが、僅かに視えたんだ」
御鏡は顎に手を当てて思い出しながら話した。
「稲葉が盾から身を出たとき、地面を踏んだ振動にオーラも揺らいでいるのが視えた。焦ったのだろうけど、あれのお蔭だ」
直輝はその時のことを思い出し、苦笑いして頭を掻いた。
清め塩の塩水で根を引かせて、道を作ったことに二人は理解を示した。
しかし結花が少し考えて抗議する。
「それ、遠距離から何とか出来たんじゃあ……御鏡さん、もしかしてサボっていません?」
「いや、色々考えたけど……二人でなければ駄目だっただろうね。火行で燃やそうと思ったが、ゴミに携行缶があった。もしガソリンが入っていたら、火事や爆発でシャレにならない」
御鏡は手振りで状況を表現しながら弁明する。
結花は躓いた缶ゴミの重さを思い出した。
携行缶やスプレー缶などの引火物が多かったと二人で思い返した。
御鏡は考察を入れて続けた。
「赤い樹は強い木行だ。水球を直接当てても、大した効果が得られない。清め塩の塩水でも回復されて無駄になる。祓い刀を持った二人の道を作るのが正解だったと思う」
考え方に二人は納得し、感心して直輝は聞いた。
「色々と考えているんですね。それに、あの樹の核。御鏡さんの言った通りの位置でしたね」
「ああ、俺は視ることが得意なんだよ」
胸に下がる鏡の裏を指で撫でながら答えた。
三人の様子を見ていた靖次が尋ねる。
「御鏡よ。お前さんから見て二人はどうだった?」
「退魔師としてやれると思います。靖次先生の弟子だけあって二人の息は合っていました」
「そうかい。なら、これからもお前さんに預けてもいいだろう」
「ふう、“今回は”から“これからも”に変更ですか? まあ、二人が良ければ……」
直輝と結花は息を合わせて答えた。
「「宜しくお願いします」」
「おお、宜しくな」
直輝はチームで討伐できたことに手ごたえを感じていた。
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