#25 八木の弱点
月曜日以降も、いつもと同じような毎日だった。
朝は待ち伏せされて一緒に登校し、お昼になると弁当持ってやってきて椅子取りゲームが始まる。
椅子取りゲームの決着(いつも八木が勝つ)がつくと、二人で手を合わせて頂きますしてオカズの交換。
放課後になると、教室まで迎えに来て一緒にかえる。
時々マックに寄り道してお喋りしたり、トラブルに巻き込まれたりしながら賑やかな毎日だ。
週末は味をしめたかの様に毎週ウチに遊びに来るようになった。
そうそう、八木に関して1つ大きな発見があった。
八木、アタッカーとしては最強の戦闘能力を持っているけど、防御力は低いね。
桑原曰く
「カンナちゃんは、恋愛経験無いからどうして良いか分かんなくて、でも想いだけは激つよだから猪突猛進しちゃってんだね。そのクセ初心だから、いざ自分が迫られるとアタフタしちゃうんだと思う」
なるほど
例えば、お風呂覗いてくれって迫ってくるけど、こっちから裸見せると恥ずかしがって大人しくなる、とか、アレが正にその通りだった。
因みに、八木のあのおバカなキャラは素なのか作ったキャラなのか桑原に意見聞いてみたけど、「素だと思うけど、どうなんだろ? 1年の頃はもっと大人しくてお淑やかだったから、初恋で暴走して人格崩壊してるのかもね」との見解だった。
まぁ、俺自身も気が付くと、口癖だった「めんどくせー」を言う回数も減っていて、なんだかんだと八木と一緒に居るのが当たり前になってて、疲労感を感じることも減って、八木にあわせて俺も変わって来てるのは事実だろう。
でも、まだ八木の暴走には手を焼いてるけどね。
「コンビニよりもドラッグストアのが種類多いのでしょうか? サイズ分からないので、買う前に確認しないとダメですよね。 あ!折角生で見せてもらったのにあの時サイズ確認しておけば!? ま、まぁ?もう一度見せて頂ければいい話ですよね? 今週末お泊り行くので、早速オネシャス!」
『おい八木、お前はいったいナニの話をしてるんだ?』
「え?聞いてなかったんですか? もうこれだから男の人は! コンドーム!コンドームの話ですよ! 週末使うかもしれないじゃないですか!」
コイツまた電車の中で、大声でとんでも無いことを
『八木、聞いてくれ』
「え?なんですか?」
『お前は栗山家、出禁だ! 生で見たとか週末使うとか、お前どこまでバカなんだよ!』
「え~ 今更テレなくてもいいじゃないですか~ だいたい生で見たのだって、栗山くんが急に裸になって見せてきたんじゃないですか~」
コ、コイツ!?
なんてこと言いだしやがんだ!!!
でもね、俺も今や最強の八木使い。
こと八木の扱いに関しては俺の右に出るものは居ないだろう。
ここで八木のペースに乗って動揺したら一気に喰われちまう。
攻めだ。攻めるしかない。
『そうだよな八木。 俺の裸見てすげぇ興奮してたもんな。 顔真っ赤にして鼻息荒くて思わず八木も裸になろうとしてたもんな。 こんな話してたら思い出しちゃって俺もう我慢できないや。 次の駅で降りて早速しけこむか? 八木、可愛いからホント我慢出来そうにないや。 八木の可愛い顔が悦楽で歪むの早く見てみたいや。 きっと可愛い声で啼くんだろうな。あーもうほんとガマン出来ないや。 いっぱい気持ちよくしてあげるから、俺のこともいっぱい気持ちよくしてくれよな』
と、甘い言葉を八木の耳元にフッと息吹きかけ囁いた。
案の定、八木は顔真っ赤にして「あの・・・その・・・いえ・・・そういうんじゃ・・・」と見るからに動揺し始め、A町に電車が停まると「きょ、今日は帰りましゅ! 続きは明日栗山くんちで!」と言って、走って降りていった。
ふ、八木に勝ったぜ
あいつ、俺が「可愛い」って言う度に「ひぃ」って肩ビクってしてた。
これで八木の思い通りにはさせないぜ。
だが、俺は忘れていた。
だいたいのラスボスには、第2形態があることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます