#24 八木と朝チュン
朝、目が覚めると八木の顔が目の前にあり、バッチリと目があった。
あーそうか、昨日八木泊まりに来てたんだっけ
『おはよう八木、もう起きてたのね』
俺が挨拶すると、八木は「ひぃ!」となぜか小さな悲鳴を上げて、布団から出てしまった。
なんだコイツ?
体を起こして八木を見ると、ベッドの端でコチラに背を向け縮こまる様にちょこんと座ってる。
顔も耳も真っ赤だ。
『どした? また急に熱でも出たのか?』
「いえ・・・その・・・なんでもないです・・・・」
八木らしくない
普通の女の子みたいにモジモジしてる。
『本当に大丈夫か?』
そう言って、八木のオデコに手を当てると
「ひぃ!」ってまた悲鳴あげた。
『熱は無いみたいだけど・・・』
「あ、あ、あ、あの!」
『うん?』
「おはようございます!」
『うん、おはよう?』
「あの・・・それで・・・何と言いますか・・・・」
『なんだよ八木らしくない。もっとハッキリ言ってくれよ』
「うう・・・栗山くんの寝顔、可愛いな~って見惚れてたら・・・その・・・栗山くんのお家にお泊りして一緒のベッドで寝たことを急に意識してしまいまして・・・ドキドキMAXのタイミングで栗山くんの眼が開いて、バッチリ目が合ったので、驚いてしまいまして・・・・」
『あ、そ。 とりあえず顔洗いにいこうぜ』
「エェー!? わたしのドキドキ告白、軽くあしらいすぎじゃないですか!? わたし傷つきましたよ!いまの!」
八木の本心を聞いたからだろうか
大人しくされるよりも、ちょっとウザいくらいが八木らしくて丁度いいやって思ってしまった。
顔を洗った後、かーちゃんはまだ寝ていたので、八木がキッチンに行って昨日の夕飯の残りから二人分の朝食を準備してくれて、二人で食卓に並んで座って食べた。
朝食食べながら
『昨日散々安全日だの言ってたくせに、一緒のベッドで寝たくらいで顔真っ赤にして、八木ってやっぱり初心なんだな』と言うと
人差し指を立てて左右に振りながら「チッチッチッ、栗山くんは乙女心という物を分かっておりませんね~ 次はこんなもんじゃありませんからね!覚悟しておいて下さいよ!」
『あ、そ』
「キィィィィ! また軽くあしらって! 今度こそ寝かせませんからね! 泣いて謝っても知りませんからね!」
俺もだんだん八木の扱い方が上手くなってきた気がする。
昨日まではあんなに押されっぱなしだったのにな。
この日は土曜日でバイトは夕方からなので、何故か既にそのことを把握していた八木は「栗山くんがアルバイトに出かける時に一緒に帰りますね」と言い、それまで栗山家に居座るつもりのようだ。
だからと言って、特にすることがある訳でも無く、二人で自室に籠ってゴロゴロして過ごした。
因みに、八木は寝間着代わりに中学ジャージを着ていたが、流石にそのままはかわいそうだと思い、ハーフパンツとパーカーを貸し、着替えて貰った。
この日の八木は、前日のような暴走気味な言動(嫁に来るだの栗山カンナだの)は無く、比較的落ち着いてて、俺も八木も喧嘩することなく穏やかに過ごしたし、俺もいつもの八木の相手したあとのような疲労感は特に無かった。
八木を駅まで送っていこうと思い、バイトの時間よりも少し早めに家を出た。
駅に着くと
「泊めて頂いてありがとうございました! 中間試験頑張った甲斐がありました! 期末も頑張るのでまたごほーび下さいね!」
『ああ、俺も楽しかったから、別に試験の結果無くても遊びに来ればいいからな。 かーちゃんも喜ぶし』
「ど、どうしたんですか栗山くん!? 何か悪い物でも食べたんですか!? 栗ご飯痛んでましたか!? 栗山くんからそんな優しい言葉が聞けるなんて、天変地異の前触れですか!?」
ぐぬぬぬ
ちょっと八木に優しくしようとしたら、これだもんな
『じゃーもーイイ! 八木は栗山家
「あー!あー!ウソですウソです! 是非また遊びに行きます! 早速来週にでも!」
『はいはい、わかったよ。 気を付けて帰れよ』
「はい! ではまた月曜日に!」
八木は俺に向かって敬礼してから改札を通って行った。
八木が階段降りて見えなくなると、俺もバイトに向かった。
なんだろうな
八木の気持ちを聞いちゃったからなのか
一生懸命な八木を無碍にするのが可哀そうだって思っちゃったのかな
でも、ドチラかというと、応援したくなるような気持ち?
バカだけど、純粋で健気なんだよな。バカだから暴走したり空回りしてるけど。
まぁ、相手が俺なんだから、応援する気あるならさっさと受け入れろよって話なんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます