#19 八木のラスボス感




 八木はいつも降りるA駅で降りる訳も無く、それが当然のことのような顔で俺と一緒にB駅で降りた。


 改札出ると

「ささ、早く栗山くんち行きましょう!」


『ホントにウチに泊まる気? ホントは冗談なんでしょ? 流石に親も居るのに女の子が泊まるのは不味いと思うぞ?』


「おーじょーぎわが悪いですね! ツベコベ言わない! 栗山くんのご両親のことなら私に任せておいて下さい! すでに種はまいてますから」


『んんん? いま聞き捨てならないこと言わなかったか? 種ってなんだ?種ってなんだよ!』


「まぁまぁ、細かいことは気にしない気にしない。 早く行きましょう!」

「あ、そうそう。 わたし制服のままで着替えとか無いので、栗山くんの服貸して下さいね? ちょっと憧れてたんですよねー、お泊りで彼氏のシャツとか寝間着代わりにするの」


『おい八木、俺はお前の彼氏じゃないぞ! ていうか、着替え無いなら家に帰れ! 汚ったないパンツで俺の部屋に入るの禁止!』


「あ!あ!あ! また女の子にそんなデリカシーの無いこと言うなんて酷い! 分かりましたよ! 替えのパンツないからノーパンで過ごしますよ! ノーパンなら文句無いんですよね! エロ親父!スケベ!変態!」


 コイツ、彼氏じゃないぞっていうのは華麗にスルーして、汚ったないパンツだけに反応しやがる。

 ホントは喜んで楽しんでるよね? ノリノリで怒ってるフリしてるだけだよね?



 はぁぁ

 めんどくせー


『ウチ行く前に、しまむらとコンビニ行くぞ。 ノーパンは部屋だけじゃなくてウチの敷地に入れないからな、警察呼ぶからな、それが嫌だったらしまむらでパンツ買ってくぞ』


「え? さっそく自分好みの下着着せようとか、やっぱりスケベ親父なんですね?うふふ」


『八木黙れ。次、なんかふざけたこと言い出したら、鉄拳制裁食らわせるからな』


 八木が何か言い出そうとしたけど、ギロリと睨んだら、自分の手でクチ塞いで珍しく黙った。



 しまむらでは、八木用のショーツとTシャツ1枚づつと靴下を買い、コンビニでは、八木用の歯ブラシを買った。


 自宅に帰るとかーちゃん居て、八木が挨拶始めた。


「いつもお世話になっております。栗山くんの同級生の八木カンナと申します。 いつも栗山くんには仲良くして頂いておりまして、今日はお母様にお会いできるのを楽しみにして参りました」


「あらあら、確か八木さんこの間来てたわよね? この子が顔ボコボコで休んでた日だったかしら?」


「そうです、その日にも1度お邪魔させて頂きました。 ご無沙汰してます」


「そうよね! あのときクッキーと洋菓子の詰め合わせ持ってきてくれた子よね? あれ美味しかったわ~」


 すげー

 八木、完璧に猫被ってる

 俺と知り合った頃の八木だ



「それにしてもこんなに可愛らしいお嬢さん、この子には勿体ないわね~」


「あら、そんなことありませんわお母様! 栗山くん、学校でもとても優しくて頼りになって、本当に素敵なんですよ。うふふ」



 俺は八木の本性知ってるから、半目で黙って二人の会話を聞いていた。

 (かーちゃん怒らせて、追い返されてくれたりしないかな)と内心期待しながら。



 んで、俺の期待も空しく、最終的に八木が自力でかーちゃんからお泊りの許可もぎ取って「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と嫁入りみたいな挨拶してた。



 たまに思うんだけどさ、八木って変なところで有能でさ、ホントは杉浦のことだって一人でどうにか出来たんじゃないの?って思う。

 むしろ、杉浦よりも八木のが重症だと思うし、今の八木見てたら杉浦なんてホント雑魚だったよ。


 逆に八木はラスボス級。ラスボス感あるよな八木って。

 どんな攻撃も効かない感じ。

 コレどうやって倒せばいいの?って。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る