#18 八木、避妊の大切さを説く



 今、教室から引きづられる様に連行されている訳で、それは学校の中だけでは無く、駅までの道や電車の中でも捕まったままな訳で、そんで八木は終始ニコニコ上機嫌なのよね。


 美少女にこんなにグイグイこられたら、普通の男子だったら絶対デレデレしちょうよね?



 でもさ、よく考えてみてよ

 コイツ八木だよ?

 ちょっぴり頭がぶっ飛んでる子だよ?

 いわゆる残念美少女だよ?

 俺からしてみれば、残念どころの話じゃない

 不幸を振りまくちょっとした都市伝説だ





 で、一度整理してみよう。


 先日帰りの電車で無理矢理A町で降ろされてマック行って、そんで元カノと遭遇して別れてたことが八木にバレた訳だ。


 元々うっとおしいくらい付き纏われてたのが、別れた事知ってタガが外れて暴走しまくって、朝も帰りもずっと腕組んでくるし、昼ご飯の時は1つのイスに一緒に座って来るし、仕舞いにはごほーび要求されてウチに泊まりに来るとか言い出しやがった、と。



 以前、桑原は言っていた。

「どうせ彼女と別れたんだから付き合えば?」と。


 正直考えたことが無い訳じゃない。


 でもさ、八木だぜ?

 付き合って無くてもこんなんなのに、恋人とかになったらどうなっちゃうの?

 学校とかでも平気で発情しちゃうんじゃないの?

 八木、バカだし。




 っていうか、八木はホントに俺のこと好きなの?

 ただ俺のことオモチャにして楽しんでるだけじゃないの?

 俺、道端で助けただけだぜ?



 よし

 分からない事は直接八木に聞こう。


『八木、1つ質問いいか?』


「なになに?何でも聞いて! 安全日とか知りたい? あ、でも今日は残念、安全日じゃないんですよね~」


『八木うるさい。 電車のなかで安全日とか連呼するな』


「えー! それはちょっと避妊に対する意識が引くすぎるんじゃないですか~? こういうのって男性の方がキチンしないとダメなんだよ?」


『おいコラ! 安全日の話題を勝手に広げるな! しかも、その諭すような言い方、いらいらを通り越して殺意が芽生えそうだぞ!』


 質問したいって言っただけで、毎回コレだよ?

 俺、一言も避妊の話しなんて振ってないよ?

 そもそも「もうすぐパパになるかもね」とか言ってなかったか? 支離滅裂だぞ?

 スマホの音声認識でももう少しマシだよ? siriだけに



『それで質問なんだが、ぶっちゃけ八木は、俺のことオモチャにして楽しんでるだけだろ? 実はそんなに好きとかじゃないだろ? 面白いオモチャ見つけてラッキー♪って思ってるだけだろ?』


「そそそそそそ、そんことないですよ! そ、そりゃね、いつもクールで反応薄いし冷たいから、ちょっと笑わせてみたくなったり、怒らせてみたくなったりしちゃいますよ? ほんのちょっとだけね?」

「あーでもショックだなー! こんなにスキスキアピールしてるのに、面白がってるだけとか思われててー! 純情ピュアな乙女心が傷ついちゃったなー!」


『八木よ、お前は純情じゃないし乙女でもないぞ?』


「あ!あ!あ! 今この人、凄い暴言吐きましたよ! みなさん聞いてました!?聞いてましたよね!? こんなに幼気いたいけな少女のこと、乙女じゃないっていいやがりましたよ!」



 こいつ、何で電車のなかでもこんなに大騒ぎできるんだ?

 このやり取り、ずっと俺の腕組んだままやってるんだぜ?

 恥ずかしいとか無いのかよ。

 









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る