#17 ご褒美ねだる八木



 中間試験の結果が返って来た。

 

 今回の試験は、八木に散々邪魔されながらも何とか頑張ったお蔭で、前回から順位を下げることなく、一応満足できる結果だった。


 だがしかし、とても屈辱的な展開がこの後待っていた。



 そう、八木だ。


 今まで八木のことを散々バカだバカだと言い続けてきた訳で、だってホントにバカだし、試験結果だって大したことないって思うでしょ?







 放課後、いつものように1組に出現した八木が

「栗山くん! 試験結果どうでした?」


『まぁなんとか順位下げずに済んだよ』


「ほうほうほう。因みに何位でした?」


『総合で15位』


 ふふふ

 俺、勉強はちゃんとやる派なのよね

 バイトしてるせいで、成績悪いって思われたくないし


「へ~、そんなもんなんですね。ふふふ」


 む?

 何こいつスカしてんだ?八木のくせに


『おい八木、ナニ余裕こいてるんだ? 八木のクセに生意気だぞ?』


「あれれ~? そんなこと言っちゃっていいんですか~?」


 まさかコイツ・・・


「わたしの順位知りたいですかー? どうしよっかな~?」


『・・・・』


「しょーがないですねー」


『八木、ホントは見せたくて仕方ないんだろ?』


「ふっふっふっ、どうぞコレ見てわたしのことを存分に尊敬して下さい!」



 うおっ!

 コイツ・・・


 総合3位だと!?


『ウソだろ・・・八木が俺より上だなんて・・・』



 なんかすげー納得いかない

 コイツに散々試験勉強邪魔され続けたのに、コイツちゃっかり自分の勉強はしてやがったのか!


「この勝負、私の勝ちですよね! ごほーび貰える流れですよね!」


『そんな勝負してないし、ごほーびなんて知らん』


「ごほーびナニがいいかな~? 週末デートにしよっかなぁ~ それともお泊り会とかもアリかな~ わたしも高校生だしぃ~? そろそろ大人の階段登りたいお年頃だしぃ~? うふふふふ」


 バカの八木がバカなこと言い出した

 やっぱりコイツ、バカだ


『そっか、じゃぁ一人でごほーび楽しんでおいで。 俺バイトで忙しいからな』


「エエエェェェ!? 栗山くんが居ないとごほーびにならないでしょ! ナニふざけたこと言ってるんですか!」


『いや、ふざけたこと言ってるのは八木だろ!』


「もう怒った! わたしは怒りましたよ! 謝るなら今の内ですよ!」


『勝手に怒ってろ。俺は帰る!』


 そう捨て台詞を吐いて、八木置いて教室を出ようとした瞬間


「決めました! わたしへのごほーびは、栗山くんのお家でお泊り会です!」


 教室に残ってた連中みんな、八木の発言に動きを止めた


『ちょっと待てぇぇぇ!!! ナニ人前で言いだしてんだよ! 泊めるわけねーだろ!』


「もう決めましたから、今更拒否しても無理で~っす♪」



 こんなコトが許されていいのだろうか


 みんな知らないだろうけど、コイツの行動力マジで凄いからな?

 八木に標的にされたら、食い尽くすまで逃げられないからな?

 マック行きたいだけで平気で人を電車から引き摺り下ろすヤツだからな?

 八木が「決めた!」って言ったら、絶対そうするヤツだからな?

 



 八木は「ささ、栗山くん、帰りましょう♪」と言い、教室の入口で絶望に打ちひしがれている俺を引きずるように歩きながら「もうすぐパパになっちゃうかもしれませんね♪」と一人嬉しそうだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る