#16 八木の悪知恵
結局、八木の家まで拉致られたが、八木がシャワー浴びてる間にすんなり脱出することに成功した。
八木がバカで助かった。
だがしかし、これは只の一時凌ぎでしかなく、俺が彼女と別れたことを知った八木のこれからの動向には、恐怖しかない。
翌朝、駅で降り改札を抜けると、いつもの様に八木が待ち伏せしていた。
因みに”待ち合わせ”ではないからな
八木が勝手に”待ち伏せ”してるだけだからな
「おはよう!栗山くん。一緒に学校行こう」
おや?
なんか普通だ
と思ったのは最初だけだった。
二人で並んで歩いていると、当たり前の様に腕組んできた。
周り同じ高校の生徒がわんさか居る中で。
八木、バカだけど美少女だから、一応男子の人気高いのよね
そもそも、八木がバカなの知ってるの、俺と桑原くらいだし。
腕組んでる俺たち見て舌打ちとか聞こえてくるし『八木暑苦しい!離せ!』って振りほどこうとするんだけど「離さないし!」ってしがみ付いて離してくれない。
それがさ、学校に着いてもしがみついてるし、下駄箱で上履き履き替えようと腕離した瞬間ダッシュで逃げても、すぐ捕まってまた腕組まれて、結局3組の教室まで腕組んだまま連行された。
そんでさ、衝撃的だったのがさ
そんな八木見たら、普通の人なら異常だって思うじゃん?
アイツ、頭おかしいよな?って
それがクラスの連中とか「カンナちゃんってホント一途だよね」とか言ってるの
あれは一途じゃなくて束縛だろ!しかも物理的&心理的両方の束縛!
それに普通束縛ってお付き合いしてる恋人とかの話じゃん?
俺、八木と付き合ってないからね!
しつこく付きまとわれてるだけだからね!
それをまるで「恋する健気で一途な彼女」みたいに言われると、発狂して叫びだしたくなる。マジで。
そして八木の変化はもちろん朝だけでは無かった。
お昼休憩になると、いつもの様に八木が弁当持って現れた。
ところが、いつもなら隣の席のイス持ってきて横に座るのに、今日はイスを運ぼうとしない。
『ん?どした?』と声を掛けると
「栗山くん、もうちょっとそっちに寄って下さい」と。
『八木はナニを言ってるの?』
「だから!私が座れないから、もう少しそっちに寄って下さい!」
つまり、俺が座ってるイスに座りたいから、半分空けろと。
『イヤだよ。なんで八木と密着して弁当食べないといけないんだよ』
俺がそう言うと、八木は実力行使に出た。
俺をズラそうと八木はお尻でグイグイ押して来て、俺の右側に無理矢理スペース作って座りやがった。
「栗山くん、さぁ食べましょう」
いつもの様に手を合わせて「頂きます」して食べようとするんだけど、利き手側に無理矢理くっつかれてるから、すげー食べにくいの。
「あれ?栗山くん、食事が進んでいませんね? どうしました? 女の子の日ですか?」
『ちっがうわ! 八木が邪魔で右手が使いづらいんだよ!』
「あらあらそうでしたか。なら私が食べさせて差し上げましょう。さあ大人しくおクチを開けるのですよ?」あーん
もうヤダ
怒っても嫌がっても逃げても、八木、見逃がしてくれないんだもん
しかもこの丁寧な口調、絶対最初からココまで企んでたに違いない
俺の右手封じて、あーんするところまでが八木の計画だろう
コイツ、バカなのにこういう悪知恵が働くんだよな
ソコがまたイラっとする
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