#11 正座で反省する八木





 杉浦の事件の翌日金曜日、顔面お岩さん状態の俺は学校を休んだ。



 放課後の時間になると、桑原と八木カンナが自宅にお見舞いに来た。


 そこで、杉浦が退学になりそうなことや、学校で事件のことが噂になっていることなんかを教えて貰った。



 しかもその噂、俺がである八木カンナを体を張って守ったことになってるらしい。


『いや、おかしーでしょ! 彼女じゃないし! 別に守ったわけじゃないし! あいつ、確実に俺狙って殴って来てたし!』


「まぁ、そうなんだけどね・・・先生から事件のこと喋るなって言われてるから、噂の否定も出来ないんだよね」


 くそ、やっぱ桑原、役立たずだ


 俺と桑原がそんなやり取りをしている間、八木カンナは部屋の隅っこでずっと正座で大人しかった。




 はぁぁ

 めんどくせー


『八木さん、もう大丈夫そう? これで杉浦は親にも連絡行ってるだろうから大丈夫でしょ?』


「昨日の夜、あの人のおじさんおばさんがウチまで謝りに来ました・・・」


『じゃぁ、もう大丈夫そうかな? ていうか、俺んちには謝罪に来てないんですけど! 近所じゃないから放置かよ!』


「いや、あの・・・ハイ」


 おかしい

 八木カンナが大人し過ぎる

 八木カンナと関わるとロクなことないからな、要注意だ



「カンナちゃん、ほら、言いたかったことがあるんでしょ?」


「う、うん・・・」


『ん?』


「あ、あの! また助けてくれて、ありがとうございました! 栗山くん居なかったら、私だけだったら、絶対解決出来なかったです! 凄くカッコよかったです! 素敵でした!」


「違うでしょ! ケガさせてゴメンなさいでしょ! ドサクサに紛れて告白しちゃってるよ!」


 うへぇ・・・


「あ、はい! わたしのせいでケガさせて、ごめんなさい!」


『ケガのことはもういいよ。悪いのは全部杉浦だから。 それにアイツのイカレ具合見た時点で、多分殴られるくらいはあるだろうって予測出来てたし』


「はい・・・」


「よかったね、カンナちゃん。栗山、カンナちゃんに怒ってないって♪」


「そ、そうだね。 えへへへへ」


『いや、チョーチにのるな。 あの時、八木がいらんこと言わなければ、隙だらけの状態で殴られずに済んだんだぞ?』


「え、エェー・・・」


『どうしてあのタイミングで、苗字じゃなくて名前で呼べとか、そんな話出てくるの??? オモシロすぎるでしょ! 折角助けようとしてるのに、俺のこと笑わそうとして、どうすんのさ!』


「ううう、ごめんなさい・・・」


「栗山!言い方キツすぎ! カンナちゃんだって反省してるんだから!」


『いやこの子、ちょっとぶっ飛んでるところあるから、ちゃんと言っておかないとダメだ!』


 この事件を境に、俺は八木カンナに遠慮するのを辞めた。

 コイツに隙見せるとロクなことにならないことを身を持って知ったからね。

 




 こうして、杉浦の件はなんとか収束した。


 しかし、俺にとっての災難は、まだ終わって無かった。

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