#10 空気読め、八木
作戦会議をした翌日水曜日と次の木曜日(絶縁宣言決行日当日)はお昼ご飯は3人で食べた。
お昼休憩は八木カンナのところに杉浦が高頻度で接触してくるらしく、それをガードする為だ。 実際に、僕と一緒に居た時にも絡んで来てたし、1組の教室の中なら態々入ってこないだろうと。
でもなんだか、なし崩しにされてる気がしてならない。
それと、八木カンナとお昼を一緒に食べる度に、から揚げと玉子焼きの交換を要求された。 八木カンナのから揚げ、美味しいから別に良いんだけど、なんか徐々に飼い馴らされているような、距離を縮められている様な、そんな気がしてならない。
それで、木曜日の放課後、作戦決行の為、桑原と3組に行って八木カンナと合流して、隣の4組に向かった。
4組の教室には杉浦の他10人程度まだ残っていて、桑原が八木カンナにGOサインを出した。
八木カンナは緊張した面持ちで頷くと、教室に入っていった。
僕たちも直ぐ後ろに続いて、杉浦の前に立つ。
すると杉浦の先制攻撃
「カンナ、急に話があるって、もしかして告白?」
うわ、ナマ杉浦、マジやべー
「そんな訳ないでしょ! 何度も何度も言ってるけど、杉浦くんのことなんて、1度だって好きだなんて思ったこと無い! ほんとぉぉっぉぉぉぉぉぉに!めーわくだから!!!」
八木が吠えた。
教室に残ってた連中がみんなコッチを注目していた。
それでも杉浦は一瞬怯んだだけで、直ぐに
「ホントはスネてるだけなんだろ? ったく我がままばっかで、しょーがねーな~」
すげー
杉浦のメンタル、すげー
「もう!なんでそうなるのよ! 嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!大っ嫌い!」
あ、八木が泣き出した。
すると桑原に脇腹突かれた。
桑原の方見ると、無言で「お前行け」との首サインが来た。
はぁぁぁ
立ち会うだけじゃなかったのかよ
『八木、よく頑張った。 あとは任せろ』
そう言って、八木カンナを庇うように前に立つ。
『えーっと、杉浦くんだっけ? 君、完全にストーカーだよ? めちゃくちゃキモイよ? 八木に嫌われてないっていくら思い込もうとしても、無理なのわからない? 八木、泣くほど君のこと怖がってるよ? あんまり聞き分けないようなら、君のストーカーの証拠持って警察に行くしかなくなるよ? 八木がこうして直接言うのも、これが最後だからね? これ以上は穏便に済ませられないからね?』
僕の言葉を聞いて杉浦は、顔真っ赤にしてプルプルしだした。
はぁぁ
ホント、めんどくせー
もう1度、杉浦に向かって言葉を吐こうとした瞬間
「呼び捨てにするなら苗字じゃなくて名前で呼んで! カンナって呼んで!」
後ろから、八木カンナが再び吠えた。
ナニ言い出してんだコイツ?って思い、後ろを振り向くと、八木カンナが凄いブサイクな泣き顔で僕に向かって訴えかけてた。
桑原は、クチ開けたまま固まってた。
『八木うるさい。今邪魔するな』
そう言って、再び杉浦の方を向いた瞬間
「お前がカンナを
殴られて吹っ飛ばされると、杉浦は馬乗りになってきて何度も殴られた。
「お前さえ居なければ!お前さえ居なければ! ちくしょぉぉぉ!」
その後、駆けつけた教師たちに杉浦は取り押さえられて、僕への一方的な暴力と八木カンナへのストーカー行為のセットで自主退学扱いの退学処分となった。
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