#09 自覚してた八木






 翌朝、教室に入ると直ぐに桑原がやってきた。


「栗山、あとでちょっと相談があるんだけど、いい?」


『ヤブから棒に、なに?』


「カンナちゃんのことで相談があるの!」


『エェー・・・メンドクサイ』


「またそんなこと言って! 杉浦くんのことでカンナちゃん焚き付けたの、栗山だって聞いてるよ! 少しは協力してよ!」


『杉浦ってダレだっけ?』


「カンナちゃんの幼馴染!」


『あー、勘違い君かぁ、って凄いメンドクサイ話しじゃん、それ』


「そうよ、だから協力してよ」


『マジか・・・』


「今日はバイトあるの?」


『無い・・・』


「じゃぁ放課後マック行こう。 カンナちゃんも呼ぶから3人で」


『わかった・・・』



 僕の平和はまだまだ遠いことが良く解った。

 本人が絡んで来なくても、援護射撃してくる奴が居たとは。









 その日の放課後、桑原に連れられて3組に八木カンナを迎えに行くと、物凄く申し訳なさそうに

「栗山くん、ごめんね・・・自分でどうにかしたかったんだけど、やっぱり怖くて・・・」


『まぁ、詳しい話しはマック行ってからでも聞くから、とりあえず行こうか』


「そうそう! 行こ行こ!」




 三人で学校を出て駅前のマックへ行くと、シェイクとポテトを3人分注文して、また2階の席へ上がった。


 桑原と八木カンナが並んで座り、その向かいに座る。


 いつもの様に、周りは高校生がいっぱい。同じ学校の制服もチラホラ。




「それで、昨日わたしがカンナちゃんから話し聞いたんだけど、栗山がカンナちゃんに「杉浦くんにハッキリ迷惑だって言った方がいい。トドメ刺さないとダメだ」って言ったんでしょ?」


『あー、うん、言ったね。話し聞いてる限りだと、その杉浦?っていうの、勘違いしちゃってるぽいから』


「それだけじゃなくて・・・前に付き合ってるって噂になった時も凄く嫌だったし、栗山くんにまであの人と付き合えばって言われたのが結構ショックで・・・」


「うんうん、栗山、なにげに無神経だからね」


『え? 俺のせいなの???』


「あああ、違います違います! 言われた時はそんなにショックじゃなかったけど、お家に帰って考えてたらダンダン理不尽に思えてきて」

「なんで近所に住んでるだけのただの同級生にこんなに振り回されないといけないの! これじゃぁ好きな人が出来ても、まともに恋愛出来ないじゃない!って」

「だから、あの人のことキッチリするまで栗山くんに付き纏うの自粛して、しっかりケジメつけてからにしようと思ったんですけど、いざ行動に移そうと思うと一人じゃ怖くて」


 コイツ今ハッキリと”付き纏う”って言ったぞ!

 自覚あったのかよ!

 しかも、昨日大人しかったのも自粛してただけかよ!


 ギロリと桑原の方へ視線を向けると、俺から目を逸らして聞こえてないていでスルーしやがった。



 はぁぁとため息吐きながら


『で、結局どうすればいいの? 絶縁宣言する時に一緒に立ち会えばいいの?』


「まぁそういうことだね」


『彼氏のフリとかは勘弁してくれよ。 変な噂立って彼女の耳にでも入ったら、マジでシャレにならないから』


「あ、それ良い作戦だね~ カンナちゃん、一石二鳥だよ!」



『・・・・帰る』


 そう言ってカバン持って席を立つと、桑原に腕掴まれて

「あーもう!じょーだんだから!じょーだん!」



 これ、僕にはなんの利点も無いんだよな・・・

 すっごい面倒で嫌なんだけど


『そういえば、メールでも良いんじゃないの? (もう話しかけないで!)って送って着信拒否とブロックすれば』


「前にメールで(人前で馴れ馴れしくしないで欲しい)って送ったら照れてると勘違いされまして、次に(迷惑だから話しかけないで!)って送ったら、わたしが機嫌悪くて一時的に怒ってるとしか思われなくて、次の日わたしの機嫌を直そうとしてるのかいつも以上に構ってきまして・・・」


『あー、ゴメン。 聞いた俺が悪かった』


 すげーな、杉浦。

 ガチなヤツだ。




 結局、直接対決で絶縁宣言することになった。


 次の日は僕がバイトがあるということで、二日後の放課後、杉浦のクラス(4組)に待ってて貰うように連絡して、4組まで行って僕と桑原が立ち会う形で絶縁宣言することになった。

 しかも教室に他の生徒が程よく残っているタイミングを狙うことにした。

 その方が証人も多くていいだろうと。




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