#08 八木居ないと平和だ







「同じ方向だったんですね!」


『そうみたいだね。 どの辺りに住んでるの?』


「わたしはA町です。栗山くんはドコなんですか?」


『僕はB町だよ。 ホント同じ方向だね。 1つ隣の駅か』


「今までも気が付かなかっただけで、一緒の電車だったこと何度もあったかもしれませんね」


『そうだねぇ、多分あっただろうね』


「そう言えば、B町ってことは中学はB中ですよね? わたしはA中でした」


『うん、B中だった』


「うふふふ、結構近くに住んでたんだぁ なんか嬉しい」



 表面上は笑顔でしゃべっていたけど、正直疲れ切っていた。


 A町の駅に着き八木カンナが「また月曜日に」と言って降り、電車が発車すると、盛大に溜息を零した。




 その夜、八木カンナから

(今日はありがとうございました。 おやすみなさい)とだけメールが来ていた。


 またスルーすると面倒なことになると思い

(こちらこそ。 おやすみなさい)と返事した。











 土曜日はバイト先の店長に頼まれて朝からシフトに入り、1日潰れた。

 日曜日は昼まで寝た後、午後から付き合ってる彼女とデートした。










 月曜日学校に行くと、また朝から桑原がうっとおしかった。



「ねねね!金曜日カンナちゃんと一緒に帰ったんでしょ!? どうだったどうだった?」


『どうも無いよ。 マック寄っておしゃべりして、帰っただけ』


「それってもう放課後デートじゃない! もう秒読み??? 二人は付き合っちゃうの???」


 うぜー


『いや、それは無い。 俺、ほかに彼女居るし、そのこと八木さんにも言ったし』


「え!?えええ!? そうなの!? 栗山、彼女居るの!?」


『声でけーよ! 居ちゃわりーのかよ』


「いや、悪いことはないけど・・・ウソじゃなくてマジな話? カンナちゃんを牽制するウソとか」


『お前失礼なヤツだな。 中学の時から付き合ってる彼女がいるの。 もう1年以上付き合ってるの! 昨日も彼女とデートしてたし』


「そっか・・・それはゴメン。知らなかった」


『いや、高校じゃほとんど言ったことないし。知らない方が普通だとおもう』


「でも、カンナちゃん、どうするんだろ?」


『さぁ? でも彼女居るって教えた後でも結構普通だったよ? そもそも桑原が考えてるような感じじゃないないのかもな』


「そうかなー・・・」


『助けて貰って良い人そうだから、友達になりたかっただけじゃないの?』

『もしくは、あの幼馴染のことで悩んでるみたいだったから、相談相手が欲しかったとか』


「ほうほう、なら後で聞きにいってみよ」


 そう言って、桑原は自分の席に戻って行った。








 この日は、休憩時間もお昼も、八木カンナはウチのクラスには来なかった。

 特にお昼は、食後ゆっくり昼寝も出来て、快適だった。



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