第24話 決着
「リリア! やるじゃないか!」
二頭のリヴァイアサンはガジルを振り落とすかのように激しくもつれ合った。
リリアの作戦はまず、俺とガジルがやり合っている間に七番のリヴァイアサンにお喋りで作戦を伝える。
その後、バレないように一番のリヴァイアサンに乗り移り、ガジルを落とすような動きを二頭でしてくれと伝えたのだ。
獣化リリアの運動神経は人間のそれとは比べ物にならず、軽々と二頭の間を渡ることができた。
そして獰猛なリヴァイアサンも話しかけられるのは初めてだったのか、新しい刺激にワクワクしているようだった。
「ぬ、ぬおおおおお!」
床に突っ伏すガジルは振り落とされないように必死に大きな手で床を掴み耐えていた。
「なんで突起物もない床を握力だけで耐えられるんだよお前は!」
「へっ、筋肉舐めんじゃねぇぞ。ひょろがりめ」
額に汗を垂らしながらもそう強がるガジルだったが、俺は容赦なく追撃することにした。
「戦いは筋肉だけじゃねぇ! 頭も使わねぇとな!」
そうガジルに言った俺は、荒れ狂う二頭のリヴァイアサンの上を必死にバランスを取りながら近づき、渾身のキックをガジルの手目掛けて放った。
――バシィィン!
「な、なんだとおおおおおお!!」
俺に蹴られた手は掴んでいた床を離し、支えていた唯一の短剣も外れ、ガジルは空中へと放り出された。
「リリア! 渾身の一撃をかませと伝えろ!」
「了解しました! リヴァイアサンさん、今です! 本気のやつお願いします!」
――ギャオオオオオオオオ!
今までとは違う咆哮を響かせると、二頭は空中へと飛び出し、体の全てがあらわとなった。
二頭が空中へと飛び出すさまは、さながら鯉の滝登りのようだった。
――バッシィィィン!
コンビネーションを取った二頭の尾ひれがガジルを薙ぎ払う。
それを空中で避けられるはずもなく、ダイレクトヒットしたガジルは猛スピードで水中へと撃ち落された。
――バッシャァァァァァァン!
巨大な水しぶきを上げながら、ガジルが水に落ちると、試合終了のゴングが鳴り響いた。
――カンカンカンカァァァン!
『試合しゅうううううりょうううううう! なんと圧倒的強さと作戦で一番二番三番をなぎ倒し、最後まで生き残ったのは七番、京谷リリアカーヤチームだぁぁぁぁぁ! 彼らに賭けていた者は最後までそのチケットを手元に残しておくようにぃぃぃぃぃ!』
アナウンスが会場に響き渡りながら観客も今日一番の盛り上がりを見せた。
二頭のリヴァイアサンは満足そうに見つめ合うと、それぞれの持ち場へと帰ろうとした。
「京谷さん! やりましたね!」
「本当によくやったリリア! お前のお喋りがこんなところで役に立つとはな!」
「えへへへ……」
リリアは軽々と一番から七番に乗り移り人間状態に戻るや否や、褒められ恥ずかしそうに照れている。
「よくわかんなかったけど、リリアちゃん凄いじゃない!」
「ありがとうございます、私動物とお喋りできるんですよ」
「え~そうだったの!?」
そういえば伝えていなかったような伝えていたような、そんな気がした。
まぁカーヤの事だ。伝えていても忘れていただけだろう。
俺は大人しくなったリヴァイアサンに揺られながら、搭乗口へと帰っていった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「お疲れ様です。そして、おめでとうございます」
搭乗口でリヴァイアサンから降りると、最初に案内された戦士がお出迎えをしてくれた。
「あぁ。ありがとう」
「それにしても凄いですね。あのリヴァイアサンを手名付けてしまうなんて」
戦士は驚きを隠せない様子でリヴァイアサンの方を見た。
リヴァイアサンは最初と違い、俺らの方を見つめる目はまるで友を見るような眼差しをしていた。
「こいつのおかげでな」
リリアの頭をポンと撫でると、照れくさそうに笑っていた。
「左様でございますか。では、こちらで表彰式がありますので、どうぞ」
搭乗口の入ってきた方とは逆の方にもう一つ道があった。
俺たちはその道へと通されると、闘技場の目立つ位置に表彰台があるのが見えた。
そこには既に、二番の台に立つガジルチームと六番チームの女性二人が三位の台に立っていた。
「お!? またお前来たんか! ったく、また負けちまったわ腹立つなぁ」
「そりゃあ優勝したんだから来るだろ。 なんでそこまで俺に固執するんだお前は」
「そらあんな屈辱的な負け方したからに決まってんだろボケ! 次は覚えてろや!」
表彰台の上で暴れるガジルを周りの屈強な戦士に取り押さえらると、表彰式が始まった。
『本日最後のリヴァイアサン水上ロデオの結果発表! 優勝は圧倒的なチームワークを魅せた京谷チーム!』
俺たちの事が紹介されると、ガジルを倒した時のような歓声が再び場内を埋め尽くした。
俺たちは少し恥ずかしさを感じながらも、手を振り期待に応えた。
『二位は惜しくも最後で敗れたガジルチーム!』
「くそ! そんな紹介いらんからさっさと帰してくれ!」
歓声の中、ガジルは棍棒で表彰台をガンガンと殴っていた。
『三位は常連の双子姉妹! 今回も残念ながら優勝ならずでした!』
そう紹介される姉妹は、紫色と黄色のショートヘアーをした双子だった。
「……」
ミステリアスな二人は特に話すことは無く、そのまま表彰式は終わり、俺たちは再びロビーへと戻ることになった。
【あとがき】
これにて第二章、リヴァイアサンの水上ロデオ編が終了になります!
もしまだレビューをしていない方、フォローしていない方はこの機会に是非していただくと、執筆の励みになります。
次回から第三章、ちょっと緩いギャグ編になります。お楽しみに!
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