第21話 おしゃべり

――ドカァァン!

――キィィッィィン!



 三番のバカップル男女ペアを倒した後、俺たちはリヴァイアサンの気の向くままに進んでいた。

 俺たちの遥か前で一番と四番のグループが戦闘をしているのを見ると、リヴァイアサンはそれを目掛けて突撃していった。


「めちゃめちゃ好戦的だなこいつ!」


「なんか楽しくなってきたわね。思ったより大丈夫そうだし!」


 ぐんぐんと戦闘中のリヴァイアサンに近づいていく俺たちに気づいた相手は、それを意識したフォーメーションとなった。

 三角形の陣形になり、それぞれが睨み合う状況となってしまった。



「う~ん、隙を突きたかったんだがタイミングが悪かったか」


 リヴァイアサンも二頭同時に相手するのは嫌なのか、少し大人しくなっている。


「そうだカーヤ、こいつらの性格を利用してやろうぜ」


「え? どうやって?」


「とりあえず四番のリヴァイアサンの顔の真ん前に魔法障壁マジックシールド張れるか? なるべく脆くしといてくれよ」


「ギリギリ届きそうな距離ね。やってみるわ」



――キィィィィン



 カーヤが杖を振りかざし少し詠唱をすると、四番のリヴァイアサンの顔の前にキラキラとした厚さ数センチの障壁が出現した。

 それを見たリヴァイアサンは少しイラだった様子で、そわそわとし始めた。


「ナイスだ! あとは……投擲!」


 魔法を吸収してしまう障壁だということは分かっているので、俺はエンチャントせずに短剣を魔法障壁マジックシールド目掛けて投げた。


 ど真ん中に命中したそれは魔法障壁マジックシールドを粉々に砕き、鋭い破片が四番のリヴァイアサンの顔面の降り注ぐ。



――ギャアイイィィィィ!



 粉末が目や鼻に入ったリヴァイアサンは悶え苦しみ、大暴れしだした。

 それを見るや否や一番のリヴァイアサンが四番に突撃していった。



「よし! 上手くやり合わせることができたぞ!」


「さすがね! こんな卑怯な作戦思いつきもしなかったわ!」


「うるせぇ!」


 俺たちはやり合う二組の様子を伺いつつ、出るタイミングを伺っていた。

 しかし、七番のリヴァイアサンはどうにも大人しくなっていた。



「てかさ、なんか睨み合いの時からうちの子大人しくない?」


「そういえばそうだな……リリアも見てないな。どこいった? まさか落ちまったんじゃねぇだろうな!?」


 危険は意識しなくても予知できる俺の脳裏には、リリアが落ちていく未来は見えていなかった。

 俺たちはあたりを見渡してリリアを探すと、獣化したリリアがリヴァイアサンの頭頂部にちょこんと座っていた。


「おいリリア! 危ないぞ! また暴れたらそんなとこにいたら落ちちまう!」


 俺は足場の着いていない頭頂部にいるリリアにヒヤヒヤしていたが、どうやら様子がおかしい。


「京谷さん! カーヤさん! もう大丈夫ですよ! リヴァイアサンとお話して、協力してもらうように頼んでみましたから!」


 リリアは獣化状態なら動物と話すことができる。

 そのスキルを活かしてリヴァイアサンとお喋りをしていたというのだ。


 実際にチンチラ型のリリアを見つめるリヴァイアサンの目は、最初に見た時よりも澄んだ目をしているように見えた。

 


「おいおいまじかよ!? そんなのありか!?」


「京谷未来予知で見えてなかったの?」


「しょっちゅう見てるとめちゃめちゃ疲れんだもん。ここぞって時にしか使わねーよ」


「つっかえないわね~!」


 そんな茶番劇を広げるほどに余裕ができた俺たちは、リリアにリヴァイアサンの舵を頼むことにした。


「よっしゃリリア! じゃあ四番の真後ろに回り込めるか! 一番と挟み込む形に持っていきたい!」


「お任せください! ……すみません、四番の後ろに回り込んでもらえますか? あとであの京谷さんを食べてもいいので」


「今なんつった!?」


 コソコソと聞き捨てならないセリフを口にしたリリアは、まるで俺の最後を見届けるかのような顔で俺の方を見てにっこりと笑った。


「俺は食われねぇからな!? あとでしっかり伝えとけよ!?」


 俺の言葉はリヴァイアサンに届くこともなく、上下に揺れながら四番の後ろへと移動を始めた。



『おおっとどういうことだぁ!? あのリヴァイアサンがまるで指示を受けたかのように四番の後ろへと回り込んだぞぉ!? こんなに作戦的な動きをするなんてまるでリヴァイアサンじゃないようだぁ! 試合の展開は分からなくなったきたぜぇ!』



 アナウンサーが喋り終わると同時に、俺たちは後ろに回り込めた。

 目の前で三人のグループと二人のグループがバチバチにやり合っている。

 その中の一人ずつが火球を放ったり水流を発生させたりと、魔法合戦をしていた。



「カーヤ! 火球側の魔導士に魔法消火フェイルだ!」


「がってん承知!」



 カーヤが魔法消火フェイルを唱えると火球が消え、水流魔法とぶつかり拮抗していたのが終わり、水流魔法が四番の三人組グループを襲う。



「きゃぁぁぁぁ! なんで魔法が消えたの!?」


「しっかりしろ! 俺たちも余裕は無いぞ!」


「お、おわぁぁぁぁ!」


 直撃した水流に足場を濡らされバランスを崩した一人がリヴァイアサンの背中から落ち落下する。

 それを見た一番は畳みかけるように魔法を放ち、俺も後ろからエンチャント短剣をリヴァイアサンに刺してアシストした。


「覚えてろよぉぉぉぉ!」


 四番の残った二人組は水の中へと落下し、脱落した。


「よっしゃぁ! 作戦成功! リリア、カーヤ! よくやった!」


「あたしたち優勝できちゃうんじゃない!?」


「リヴァイアサンも上手くいって喜んでます!」


 調子のいい俺たちは、続いて一番と真っ向勝負となった。

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