第20話 秘策
「うっひゃ~! 実際に乗ってみるとすげぇ爽快だなぁ!」
「これからあいつらをみんな蹴落とせばいいのねぇ!」
「あわわわ……」
少し余裕そうなカーヤと、手すりに必死にしがみついているリリアはまだこの動きに慣れていないようだ。
やはりバカは高いところが好きというのは本当なのだろうか。
しかしぐんぐんと前へ進むリヴァイアサンは、ゲートの中にいる時よりも格段に乗りやすかった。
上下に揺れながら進む動きはまるでロデオだ。
「七番! まずはお前らから落ちてしまえ~!」
ある程度進むと、横から三番のゼッケンをつけたリヴァイアサンが近づいてきた。
上には二人の男女が乗っている。
男は戦士で女は魔法使いのような恰好をしていた。
「まずいカーヤ!
「任せなさい!」
女は火球を俺たちに放ってこようとしているのが見えた。
それを予知しカーヤに反射魔法を唱えさせた。
俺たちと男女の間にキラキラと光る薄い魔法の壁が出現する。
「くらいなさい!
カーヤが魔法反射を発動した後、俺の予知通りに女は火球を放ってきた。
――ゴォォォォ!
――パキイィン!
カーヤの反射魔法に火球が当たるとそれは来た道を戻り、三番のリヴァイアサンの左胸に命中した。
――ギャイイィィィィ!
左胸のあたりに命中したリヴァイアサンは甲高い叫び声をあげた。
ダメージに苦しみ激しくもだえるリヴァイアサンに男女は必死に手すりにしがみついていた。
「よくやった! 次は……俺の番だな。エンチャント付与、炎! ……からの投擲!」
――シュンッ!
購入した数多の短剣の一つを手に取り、スキルで炎を纏わせると俺は投擲のスキルで力強く相手の手すり目掛けて投げつけた。
投擲スキルのお陰でもの凄いスピードで飛んでいく短剣は、見事の手すり部分へと命中した。
片方の手すりの付け根が燃え落ち、ガクンと傾いた手すりに男女ペアは体勢を崩す。
「よっしゃぁ! 作戦成功!」
「京谷やるじゃない! あとはもう片方の手すりよ!」
しかし男女ペアも簡単には落ちてくれないようだ。
荒れ狂うリヴァイアサンの上で上手くバランスを取りつつ、男は剣を床に刺しそれを手すり代わりにしていた。
「あわわわ……」
リリアはまだ動きになれないのか、手すりにしがみついていた。
まだ慣れるのには時間がかかりそうな様子だ。
「カーヤ! リリアはまだ慣れてない! ここは俺たちだけで乗り切るぞ!」
「あたしがいれば余裕よ!」
――ガイィン!
俺は再びエンチャント付与した短剣をもう片方の手すり目掛けて投げるが、戦士の盾で弾かれてしまった。
「今度は避けられるかしら!?
女は魔法陣を俺たちの頭上に発動させると、そこから大量の火の粉を撒き散らしてきた。
だがしかし彼女の作戦はわかっている。
俺たちに再度
「カーヤ! 今度は
「え? どっちって? とりあえずリフレクター出すわよ!」
カーヤは上手く聞き取れなかったのか、相手の作戦通りに
――バシュンバシュンバシュン……
「バカやろおおおおおおお!」
弾ける火の粉はリヴァイアサンを攻撃し、面倒くさそうに暴れまわった。
「ご、ごめぇぇぇぇぇん!」
「こ、怖いですううううう!」
必死に手すりにしがみつく俺たちを見て男女は高笑いをした。
「はっはっは! 我々の作戦通りだ! さすがだジェミニ、君は天才だよ!」
「いいえ、ファイ。あなたの作戦通りよ!」
だが揺れるリヴァイアサンに体勢を崩す男女、こいつらも余裕は無さそうだった。
「くそ! 面倒くさいな! まずはあの女から攻撃するか」
俺はエンチャントした短剣をジェミニとかいう女目掛けて勢いよく投げた。
――ガイィン!
「させないよ!」
それを見た戦士ファイは守ろうとジェミニの方へ駆け寄り、盾で弾いた。
「はは、見えた通りだよ!」
ファイがジェミニの方へ動いた瞬間、俺はもう片方の手すりの方へと短剣を投げていた。
暴れるリヴァイアサンの上でそんなに早く体を転回することはできない、そう考えていた俺の作戦は見事に的中し、短剣はもう片方を燃え落とし相手の手すりは完全になくなった。
「これで止めだ!」
――バシュ!
俺は続いてエンチャントしていない短剣をリヴァイアサンの目元を目掛けて投げた。
真っ直ぐに落下することなく進む短剣はリヴァイアサンに目視されることなく目玉の下に刺さった。
――ギイイイイアアアアア!
甲高い雄たけびと共に大きな波を立てながらザバンザバンと縦に揺れる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「きゃああああ!」
手すりもない状態ではさすがにこの動きに耐えられるはずもなく、男女は水の中へと落ちていった。
堕ちていく様子を見るや否や、魔導救急隊がリヴァイアサンの中を縦横無尽に動きながら駆けつけ、二人を救出していった。魔法陣の上に乗りながら波に乗る様子はまるでサーフィンの様だった。
『おおっとぉ! 七番が三番を水中へと落としたぁぁぁぁ! 三番脱落ゥゥ! 生きていてよかったねぇ!』
そうアナウンスが鳴ると会場は大盛り上がりだ。
「いい調子よ京谷!」
「どんなもんよ! カーヤも今度は間違えるなよ!」
俺たちは間違えぬよう、魔法を伝える際に言葉に加えて指でもそれを伝えるようにした。
指一本で
「リリア! もう慣れたか!?」
「は、はいなんとかぁ! ようやく慣れてきました、お待たせしました!」
リヴァイアサンは一通りの動きをし、ようやく慣れてきたのかリリアは片腕で手すりを持つほどにまでなっていた。
「よっしゃ! この調子で全員蹴落とすぞ!」
「お~!」
俺たちは荒れ狂うリヴァイアサンに身を委ねながら、次の参加者の近くに行くのを待った。
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