第10話 入場
軽く準備運動をしながら闘技場の門の近くへと進む俺たち。
入り口では危険な重火器などを持っていないか、武装した男たちによるボディチェックが行われていた。
「
「ほらよ。短剣くらいしか持ってないぞ」
「……そのようだな。次、そこの女」
「あまり体を触らないでください!」
素直に受け入れる俺と、ボディチェックを嫌がるリリアの体を手でぽんぽんを叩き、爆薬などを持っていないか調べた。
観客に危険が及ぶ魔法や重火器の使用は禁止らしい。短剣の他に何もないことを確認すると、男は今回使用するペリスの額を聞いてきた。
「さて、今回の試合で使用するペリスはいくらだ」
「1500ぺリスだ。これは俺の全財産だ」
俺はさっきのマッチョブラザーズたちに賭けて得たペリスを全て賭けることにした。そう告げると武装した男は1500ぺリス分の通貨が入ったマネーガンをこちらに渡してきた。
「ぜ、全部賭けちゃうんですか!? 負けたら今夜の晩御飯抜きってことですよ!?」
ご飯が食べられないのは嫌だと駄々をこねるリリアだったが、相手の行動を先読みできる俺は負ける気がしていなかった。
しかし危険を予知する時は大丈夫だが、意識して発動するととても疲れてしまう。
使いどころは間違わないようにしないといけないな。
だが、問題はどうやって止めを刺すかだ。俺には短剣しか使える武器がない。リリアも、大きく弱らせる魔法は使えないだろうと踏んでいた。
「まぁ任せろって。俺たちで協力して倒してやろうぜ」
「勝つ方法があるってことですよね……私、京谷さんを信じます! 着いていくって決めたんですから!」
そう気合を入れなおした俺たちは、闘技場の硬い土を踏みしめながら奥へと進んでいった。
『さぁさぁ本日の目玉試合! ほぼほぼ一般人の
マイクでそう煽り倒すと、観客が今日一番の盛り上がりをみせていた。カーヤは最前列で耳を激しく動かしながらこちらに手を振っている。
「がんばりなさいよ~! あたしの弁償金がかかってるんだから! 負けたら許さないからね~!」
そう俺を応援している様子だったが、振っている手にはオーク側に賭けた参加券を握りしめていた。
「あいつ、ほんと能天気な奴だな。っていうか応援する割にはちゃっかりオークに賭けてんじゃねぇか!」
「いつでも楽しそうで羨ましいですね」
今自分が多額の借金を背負わされているとは思えないほどの無邪気な顔で観戦しているカーヤは、悩みなんて一切ありませんという様子だった。
『さぁ続いて! 檻の中に入れられたオークの登場だぁ! おおっと……本日二戦目だからかは知らないが、さっきの赤髪の試合よりも気が立っているようだぞぉ!?』
そうアナウンスが入る中、反対側の入り口からオークの入った檻が大きな荷台に乗せられ運ばれてきた。
ガシャンガシャンと中で暴れまわるオークは、先ほどカーヤを喰い損ねた怒りからか、かなりご機嫌な斜めだ。
「リリア、来るぞ。気を引き締めろ」
「は、はい!」
俺は初めての命を懸けた戦闘に武者震いをしていた。俺の未来予知がどこまで通用するのか、試したくて仕方がないのだ。
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