第11話 対オーク戦

――ガイイィィィン! 



 オークの入っていた檻の蓋が金属音を立てながら開放され、同時に盛大なゴングが闘技場内を響き渡った。

 オークは手に持った棍棒を振りかざしながら、一直線にこちらに向かってくる。



「リリア! 俺の言う通りに動け! 違うことをしたら死ぬかもしれないと思えよ!」


「わ、わかりました!」


 そう忠告した俺は、まずオークがどう動いてくるのかを未来予知で探った。


 すると脳裏には、オークがこちらに突進してきた後、右手に持った棍棒をリリアに向かって薙ぎ払うように振るっているのが予知できた。

 それと同時に俺の心臓もかなりの脈を打つ。


「リリア! 獣化して上に大きく飛べ!」


「は、はい!」


 俺がリリアと反対方向に移動しつつ支持するや否や、あっという間にチンチラ型に変身し大きくその場でジャンプしてみせた。


 すると予知通り、オークはリリアの元居た場所を棍棒で風切り音を鳴らしながら薙ぎ払い、空を切っていた。


「あ、ありがとうございます! 助かりました!」


「お安い御用よ! さ、ここからどうやって弱らせていくかだな」

 

 俺はマネーガンに1500と表示されているのを確認したあと、ギアをくるくると回転させ一発100ぺリスの弾丸表示に切り替え銃をリロードした。


「まずはこの銃の威力を確かめたい! リリア、オークの膝に攻撃魔法を頼めるか!」


「承知しました! ブラスト!」


 チンチラ状態のリリアは自慢のひげを震わせながら、口から細い緑色のブレスを吐き出した。


 見たところ風魔法を使えるようだ。


 ブラストはオークの右膝に当たり、体制を崩した。俺はその隙にマネーガンを2発、オークの目に向かって撃った。



――バスバスッ!



 しかしオークは棍棒でその弾丸を受け止めると、五センチほど貫き棍棒の中で留まってしまった。


「100ぺリスの弾だとこんなもんか……」


 オークは追撃してこないのを見て体勢を立て直すと、今度は俺の方へと向かってきた。


「右ッ!」


 棍棒を振る直前に見えた未来に合わせ、攻撃を避ける。しかし手数が向こうの方が多く、このままじゃじり貧だ。


「京谷さんから離れなさい!」


 リリアが鋭い歯でオークの右手に嚙みついた。

 するとオークは棍棒を手から離して仰け反った。


「ありがとうリリア!」


「お安い御用よ!」


 俺の真似をするリリアを前に俺は体勢を立て直した。


 次に試したいのは300ぺリスの弾丸だ。300の表示に切り替えリロードした俺は、再びオークに隙が出来るのを待った。



 リリアを腕から振り払い、棍棒を手に取る。攻撃が当たらないストレスからなのか、棍棒を振り回しながら突撃してくる。何が何でも当ててやるといった感じだ。

 しかし俺には全ての動線が見えている。のらりくらりと棍棒を躱す俺を見て会場はどよめいている。



「お、おいあいつ、なんで攻撃があたらないんだ?」


「まるでどこに攻撃が来るのかわかってるみたいだ……でも動きの割にはめちゃめちゃ疲れてんな。貧弱か?」


「いいぞ京谷! あたしの仇をとってくれ~!」


 どよめくなかカーヤが声援を送ってくれていた。



「はぁ、はぁ。くそ、しょっちゅう未来予知を使ってるとかなり疲れるな……」


 連続して未来予知を発動したせいで、俺はかなり息切れしていた。

 避ける動作も足すと百メートルを全力疾走したかのような呼吸になっていた。



 俺はなんとか耐えつつ、オークの攻撃を避けつつ壁際まで誘導した。


 壁に背中が付くくらいの距離まで来ると、俺は振りかざされたオークの攻撃を間一髪で避けた。


 壁に棍棒を思い切り振り下ろしたオークは手に反動が行き、片足を上げ思わず仰け反っていた。


「リリア! 今だ! 地についている方の足首を狙え!」


 そういうとリリアはブラストをオークの右足目掛けて放った。バランスを崩したオークはひっくり返り、地面に背中をつけた。


「よし、今がチャンスだ!」


 300ぺリスの弾丸を棍棒を持つ手首に向かって撃った。真っ直ぐ進む俺の弾丸は地面に寝るオークに外すことはなく見事ヒットした。



――バシュン!



 ヒットした弾丸はオークの手首を貫通し、叫ぶオークの手から棍棒が滑り落ちた。



――ズシャァン……



「ナイスです京谷さん!」


「リリアもナイスアシストだった!」


 俺の戦闘を見て会場がとてつもない勢いで盛り上がる。なぜならオッズ30倍の俺が優勢なのだ。賭けた者はこれ以上ない興奮で叫び散らしていた。



「よし!300でこの威力なら、1000ぺリス弾丸で確実に仕留められる!」


 そういう俺はマネーガンの表示を1000に変更し、リロードした。

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