第7話 服探し

 真昼間まで宿屋にいた俺は、チェックアウトの時間だとオババに叱られながら宿屋を後にした。


 俺たちはあれから、ゲームでもやったことのあるポーカーを店でやり、少しのお金を稼いだ。


 幸い未来予知で少し先が読めるおかげで、降りるタイミングやベットするタイミングは自由自在だった。

 しかし発動するたびに息切れするせいで、かなり不審がられてしまったのは言うまでもない。




 外に出ると、まだ真昼間だった街はガヤガヤと賑わっていた。

 リリアにもそれなりの服を買ってやらないといけないなと思っていた俺は、獲得した1500ぺリスで食べ歩きが出来そうなものを買いつつ、服を見に行くことにした。


「そういえば京谷きょうやさん、どうしてあんなに連続して勝てたんですか?」


 不思議そうな顔で下から覗き込むリリアだったが、ここでネタバラシしておくことにした。



「実は、未来予知を発動すると数秒先の未来が見れるんだ」


昨夜リリアの前で未来予知を発動した時、見えないと思っていたが数秒後も同じ場所で座っていた為、見えていたことに気が付かなかったのだ。


「そうだったんですね! もしかして、凄く強いスキルなんではないでしょうか?」


「かもしれないな、意識してどんどん使ってみるか」



そんな会話をしながら、俺たちは服屋がたくさん揃っている商店街のような所にたどり着いた。




「リリアはどんな服が好みなんだ?」


「あまり自由に服を選ぶ機会がなかったので、分かりません……」


 洗濯された少し綺麗なローブの裾を握りながら、リリアはそう言った。確かに俺もギャンブルをする時はスーツが多かったから、何か好きな服を選べと言われたらすぐには出てこないだろう。


 窓に映る自分の姿をみて、俺もこの世界に合っていないスーツをそろそろ着替えないといけないなと感じた。


「なら色々見て回るから、欲しいものがあったら言えよ。金の事は気にするな、足りなかったらまた俺がギャンブルで値引き交渉してやるさ」


 明るい感じで俺がそう言うと、リリアは少し安心した様子で俺の前を歩き始めた。


 30分ほど俺たちは色々は服屋を物色した。




京谷きょうやさん、これなんてどうでしょう!?」


 手に取っていたのは丈の長いメイド服だった。


「それはちょっと動きづらいんじゃないか?」


「そうですか? かわいいと思ったんですけど……」


 持っていたメイド服を置きなおし、今度は反対の店にあった丈の短いチャイナ服を手に取ってあてがっていた。


「これはどうですか!?」


「それは動きやすそうだが、露出が多いからかえって動きづらそうだ」


「動きづらそうばっかりじゃないですか! もう!」


(あんな短い裾で歩き回られちゃ、たまったもんじゃない)


 そう変な妄想を繰り広げていた俺の前で、リリアはまた変な服をあてがっていた。



「スクール水着!?」


 リリアが手に取っていたのは紺色の、吸水性が良さそうな布だった。あれは学生の頃よく見たことがあるスクール水着そのものだった。


「なんでそんなもんがこんなとこに! しかも旧タイプ!」


「すくーるみずぎ……? きゅうたいぷ…?」


 リリアは聞いたことがない単語に首を傾げていた。


「そんなものはダメです。置いてきなさい」


 まるで保護者のように俺はリリアに言った。


 するとふてくされた様子でスクール水着を投げ捨てると、奥から店主が怒りながら出てきたので俺たちはその場から去った。



 あれから違う通りの服屋を見ていたら、リリアにピッタリな服が見つかった。

 白の生地に水色の刺し色が入った服に、為の短いスカートがヒラヒラと揺れている。華奢な彼女にはピッタリの代物だった。



「これならピッタリじゃないか?」


「私もこれ好きです! これにします!」


「あいよ、300ぺリスね」


 そうはしゃぐリリアを横目に、俺は店主にポケットから出した代金を支払った。


「あ、コラ! 人目につかないところで着替えなさい!」


 その場でローブを脱ぎ、半分パンツまで見えていたリリアを制止させ、傍の路地裏で着替えさせた。


(白か……)


 紳士らしからぬ事を考えている間に、リリアが路地裏から出てきた。出てきた彼女はさらに美しく、見違えるような姿を現した。


「ど、どうですか……?」


「よく似合ってるよ」


「あ、ありがとうございます」


 照れながらはにかむリリアは、より一層可愛く見えた。



「さ、あとは俺の服だが……これでいいか」


 俺は上下セットのマネキンを見つけ、そう言った。今のジャージにどことなく似ているが、この世界に合わせた紺色のジャージになっている。現代のように無地ではなく、所々に装飾が施され、冒険者としても使えそうな見た目だった。


 ついでに横にあった短剣も手に取った。まるで今から冒険者になります、といったセットだった。


「おっちゃん、これもください」


「あいよ。500ぺリスね」


 そこそこの代金を支払い、俺も路地裏で着替えた。これで最初の菓子パン代を除き、あと500ぺリスだ。


京谷きょうやさんもよくお似合いですよ!」


「そ、そうか? ありがとう」


 最近ジャージしか来ていなかったせいか、違う服を着て褒められると妙に恥ずかしい気持ちになった。


「さて、ひと段落したところでもう少し所持金を増やしたいよなぁ」


 そう独り言を口ずさんだ俺は、何か一発で儲けられそうなギャンブルを探すことにした。


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