最終話 追加スキル…なんでこうなるの?!
僕は人間形態に変化したドラゴンをエスコートして転生の門まで連れてきた。
途中、周りの人から、
「あんな娘、いたっけ?」
「あいつ、何で手を繋いで一緒に歩いているんだ!?」
と言われて、僕は背中を丸めてすっかり萎縮していた。
「なんじゃ、儂をエスコートしているんじゃからもっと背筋を伸ばさんか!」
「は、はいっ!」
克を入れられてあわてて背筋を伸ばす。
僕達の後ろからマーリンと副隊長が付いてくる。
「…なんだか仲が良さそうですねえ」
「そうだね。こうやって見てると恋人みた…」
副隊長がマーリンの雰囲気に気づき、途中で言葉を遮る。
(なんか、焼きもちやいてる?!)
マーリン自身は自覚しているかはわからないが、ニコニコしながらも目が笑っていない。静かに怒っているようだ。
昨日の仲直り計画がまさかこういう形になるとは副隊長も予想していなかった。
転生の門に到着すると、ドラゴンは僕の手を離した。
「じゃあ、お別れじゃな。この数日間中々楽しかったぞ」
「元気で!」
生まれ変わるのにそういう言い方も変だと思ったけど、僕はドラゴンにそう言った。
すると、ドラゴンが僕に近づき頬にキスをしたんだ。
「じゃあ、サラバじゃ!」
手を振りながら転生の門をくぐっていった。
後ろを振り向くと、ニコニコとしたマーリンがこっちを見ていたんだけど、なんだか目が笑っていないような。
「…良かったですねえ、キスまでしてもらって」
「えっ?! いやあれは」
「モテモテでけっこうですねえ」
そう言いながらスタスタと戻っていくマーリン。
副隊長はその様子を見ながら片手で頭を抱えている。
「副隊長~、僕、何かしましたか!?」
「あー、えーと、まあ頑張れ!」
そう言って僕の肩を叩いて副隊長も戻っていった。
その日はマーリンは僕と全然話をしてくれなかった…何でだろう。
二日間の休みの後、僕はいきもの係の仕事をしていた。今日、新しくモンスターが来るらしい。
僕がモンスターのいる部屋に行くと、大きな水槽の中に水龍が泳いでいた。
「り、リヴァイアサン!?」
「今日からこのドラゴンを担当してもらいます」
冷静な口調でマーリンが説明してくれた。リヴァイアサンはこっちを見ると、ウインクしてくれた。
「ちなみにメスだそうです」
「そ、そうなんですか」
なんだかうっとりとした目で見られている気がするのは気のせいなのかなあ。
その様子を他のいきもの係の隊員と見ていた副隊長。
「大丈夫なんですか?」
「…大丈夫なんだけど、どうやら才能開花の追加スキルがとんでもなさそうなんだよねえ」
「スキル?」
「マーリンには先に説明しといたんだけど。例えるなら、ポケ○ンの特性メロメロ。異性が反応して自分自身がモテ属性になる、みたいな?」
まあ人以外限定らしいけど、と副隊長は大きな板ータブレット端末ーの隊員名簿のプロフィール画面を見せながら説明した。そこには、
[スキル・魅了”チャーム”]
※異性の動物、魔物、モンスター限定
と、書いてあった。
「ゲーム例えは通じにくいと思いますけど」
「分かりやすい例えにしたんだけどなあ。この前の大型犬に乗っかられてたのもそのスキル発動の結果じゃない?」
「そういえは、あの犬メスでしたねえ」
「えっと、リヴァイアサンのご飯って、魚でしたっけ?」
「こちらをどうぞ参考にしてください」
マーリンはそう言うと、分厚い資料を僕に渡してくれた。けど、文字が分からなくて読めない⋯。
「これ、何て書いてあるんですか!?」
「ご自分で調べてください」
なんだかマーリンの反応が冷たい…本当に何でなんだー!?
こうして僕のいきもの係(モンスター担当)の仕事は続く事になった。
もうすでに死んでいるんだけど、そのうち色んな意味で死ぬかもしれない…。
〈完〉
獣使い《ビーストテイマー》の僕が何故かドラゴンのお世話を?! 東寒南 @dakuryutou
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