第8話 気まずい雰囲気…どうしよう

 あの騒動から二日。

 サッサッ。僕は檻の外をホウキで掃除していた。

マーリンは物資を確認して補充分の注文書に書き込む。

二人に全く会話は無かった。

(…気まずい)

 二人ともこの状況をなんとかしたいと思ってはいた。

一言マーリンから「ごめんなさい」と言えればそれで済むんだけど、中々言い出せず沈黙が続いていた。

 ドラゴンも二人の様子に気付いたのか、交互に心配そうに見ているようだった。

 その時、凄い勢いで副隊長が部屋に入ってきた。

「二人とも! こっちへ!」

何事だろうと思う間もなく、腕を掴まれて引っ張られていく。

「ど、どうしたんですか!?」

聞いても何も答えてくれない。連れてこられた先は、

「第2…部隊隊員室?」

二人で中へ入ると、

パァーン!

空砲の音と共に、

「入隊おめでとう!」

と、全員から言われた。ビックリしている僕に隊員の一人が説明してくれた。

「今年の新人歓迎会はもう終わったんだけど、エリックにどうしてもおめでとうってお祝いしたかったんだとさ」

 元々お祭り騒ぎが好きなメンバーなので、事あるごとに色々イベントを行っているんだって。

「さあ、乾杯しましょう! エリック、どの飲み物がいい?」

飲み物…どれが美味しいのかまだ僕には分からなかった。

「ええっとー」

悩んでいると、隣でマーリンがコップに飲み物を注いで、僕に渡してくれた。

「このジュースだと、エリックの世界の飲み物に一番味が近いと思います」

「ホントですか? ありがとうございます!」

「エリックの世界の食べ物と私のいた世界の食べ物は似ているみたいなので…私もこちらに来た頃、食べ物の違いで戸惑っていたので」

ちょっと照れ気味にマーリンは説明した。

「教えてくれてありがとうございます!」

喜ぶ僕を見てマーリンは嬉しそうにしているようだった。

 「さて、コップは持った? じゃあ」

「「「かんぱーい!」」」

 うまーい! や、仕事の後はビールだよなあ、という声があちこちで聞こえていた。

「…おまえら、仕事時間もう少しあるんだからまだ酒は駄目だそ!」

副隊長からの一声。でも、部屋中にお酒っぽい匂いはしているし、見ていると泡の入った液体、エールみたいなのを飲む人達がちらほらいるような。

「…おとといはすみませんでした」

横にいたマーリンが小さな声で僕に言った。

「えっ?!」

「私、つい八つ当たりみたいな事を言っちゃって」

マーリンの顔を見ると少し赤らんでいるような…。

「マーリン、ひょっとしてそれ、ビールか?」

副隊長がこっちに声をかけてきた。

「えっ?!」

よくよく液体を見ると、泡が入っている黄色い液体みたい。お酒の匂いもしている。

「だ、大丈夫ですか?!」

マーリンはお酒が入ったからかボーッとしているみたい。

「大丈夫…だと思います」

心配でオロオロしている僕に、

「新人、これも飲めー!」

隊員数人が僕に強引に飲み物を飲ませた。に、苦い!

途端に頭がフワフワして僕は倒れてしまった。

「誰だ! 未成年に酒を飲ませたのはー!」

副隊長の怒りの声が聞こえた様な気がした…。










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