第6話 火事場の馬鹿力でまさかの才能開花?! 

 いきもの係の仕事は、朝は作業着を着て魚とかを転生する場所に運んで行く事。

大量だから人手が必要なんだけど…。

「水が跳ねるぞ! 気を付けろ!」

「はい! この水槽運んで!」

とにかく慌ただしい。濡れるのを気にしていたら終わらない。

 次に動物達にエサをあげたり色々なお世話。動物によっては檻の外でも大丈夫なのもいるみたいで…、

「エサはこっちだよー。うわっ! 上に乗らないでー!」

気を付けないと大型の犬に乗っかられたりするんだ。

 猫というモフモフな生き物は、なんだか一ヶ所に固まっている事が多いみたい。

床にエサ入れ代わりの鍋を置いておいたら、その中で丸まっていて可愛かったー!

 そしてドラゴンのお世話…まだまだ僕は認められていないみたいで、檻の中からブレスを吹いてくるんだけど、檻は結界が張ってあって、外まではブレスは届かない。

 でも、風圧は伝わってくるから僕はよく吹き飛ばされる。からかわれているのかなあ。

 もちろん他にもモンスターはいるのでそれらもお世話をしている。マーリンがすごく上手に相手をしていて感動しちゃう。

 2日くらい経って、日課の一つで部屋の外のドッグランに犬を連れていくと、

「今、柵を直しているから犬を離しちゃ駄目よ!」

 他のいきもの係の人に言われたんだけど、犬は外に出た喜びで暴れて綱が手から離れてしまった!

「ま、待って!」

走ったけど追い付けない! 僕は思わず、

「止まれ!」

と、叫んだ。すると僕を中心に犬が走っていった方向に風が吹いた。

その瞬間、ピタッと犬達が止まってくれた。

「よし、良い子だ。こっちへおいで」

大声で言うと、犬達はこっちへやって来た。

「今の、ビーストテイマーの能力?」

「嘘でしょ!? 言うこと効かせるのってせいぜい一匹とかが限度じゃないの!? あんなに多くの犬を従わせるなんて!」

 周りにいた、いきもの係の仲間が口々に驚きの声を出している。

「ただ、乗っかられている所を見ると、まだ舐められているわねえ」

 そう、僕はまた大型の犬に乗っかられていた。

「お、重い…」

 向こうから副隊長と昨日の男性とマーリンがやって来た。

柵を直していたのか、手には大工道具の入った箱を持っている。

「さっき犬を使役したのは、エリックか?」

「えっ?! 何の事ですか?!」

「いや、すんでで柵から犬が逃げ出す所だったから助かったよ、ありがとう」

 お礼を言われて、僕は照れてしまった。

その日はそのまま犬を部屋に戻した。

 「…テイマー能力がここで開花したかな?」

「死んだ後で開花なんて、そんなことあるんですか?」

 副隊長は腕組みをしながらマーリンにこう言った。

「たまーに、生きている間はそんな異能力持っていそうな気配しなかったのに、死んだ後で能力開花する奴がいるんだよ。まあエリックはレベルが低いまんまで死んだんでそのレアケースに当てはまったのかもな」

 マーリンは複雑そうな表情で副隊長を見ていた。

「…人によるからそんなに気にしなくて良いよ。あなたはあなたで努力しているのは分かっているから」

そう言われたマーリンは、何か思う所があったのだろう。ギュッと拳を握りしめていた。


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