第3話 見たことない物がありすぎる!
一晩考えて仕事を引き受けるか決めなきゃならなくなったけど…。
「僕、泊まる場所がないんですけど」
副隊長は、そういえば! というような顔をして少し考えていた。
「水道、ガス、電気、どれか使った事は?」
「えっ? 何ですかそれ?」
「…やっぱり知らないか。今までと全然文明が違うだろうから生活と食に慣れなきゃならないよねえ。一緒に暮らしてサポートしてくれる人が必要か」
「私は異性と一緒に暮らすのは絶対嫌ですからね」
エルフの女性が即答した。
「さすがにそれは頼まないから安心して」
そう言った後、副隊長は少し小さめの板を懐から取り出し、それに向かって話し始めた。
「もしもし? ものすごーく大事な頼み事があるんだけど、えっ? うーん…よし! お昼1ヶ月分おごるから! OK?」
しばらく話した後、
「こっちに慣れるまで一緒に暮らしてくれる人と話はついたから。外の廊下で待ち合わせする事になったんでついてきて」
副隊長と一緒に廊下へ出た。そこには花畑で会ったオーガが待っていた! 僕を指差して、
「お前! 待てって言ってたのに逃げた奴だな!」
「えっ?! そう言っていたの?!」
「…平太を撒いて逃げるとは。そんなに足が早かったのか?」
副隊長の質問にオーガは、
「そうなんすよ。花畑でまだ迷ってる奴がいたんで、連れてこようと声をかけたら猛スピードで逃げられちまって」
「…翻訳必要だったらしいから、言っている言葉が分からなかったんじゃないか?」
オーガはキョトンとした顔をしていたけど、
「…あー!!」
どうやら納得したみたいで僕に笑顔を見せてくれた。
「じゃ、約束通りうちで世話するんで。お疲れ様でした!」
そう言って「こっちだよ」と、オーガは家まで案内してくれた。
建物の長い廊下を抜けて、扉をくぐって外に出ると、町が見えた。こっちも今まで見たことがない建物や物がいっぱいある。
「こっちが商店街。服とか食べ物とか色々売っているぞ」
オーガが説明しながら歩く。僕もはぐれないようについていった。
「あ、俺の名前は平太っていうんだ。エリック…だっけ? よろしくな」
「よろしくお願いします!」
そういう会話をしながら食料を買って帰った。
着いた場所は大きくて高い建物だった。
「すっっごく高ーい! 上が見えない!」
「そりゃ真下から見たら見えないよなあ。ここの部屋を借りてるんだよ」
いっぱいある扉の一つを開けると、個室みたいな部屋があった。入り口で靴を脱いで入らなきゃならないみたい。個室の一つに案内されて色々な物の使い方を教えてもらう。
平太が壁を触ると、室内が明るくなった。
「えっ!? ランプもないのに明るくなった!」
平太は僕の言葉が聞こえていなかったみたいで、何かブツブツ呟いている。
「水道、火の使い方と、電気も教えてくれ、か」
「平太、どうしたの?」
「えっとー、ここでは井戸じゃなくても水が使えるんだよ。台所のここの蛇口をひねると」
実際、蛇口から水を出して説明する平太。
「へー! 便利だね!」
「で、ここがコンロ。これもひねると火が出る。ちゃんと火を出さないと危険だから注意しろよ」
「危険…分かった! 気を付けるよ!」
僕の反応が素直だったからか、平太はなんだか嬉しそうだ。
「じゃあ電気」
「この明るくなったやつ?」
「そうそう。…て、えっ!?」
驚いた表情で平太は周りを見て、
「あー、俺、いつの間に電気着けたんだっけ?」
「部屋に入った時に壁を触っていたよ」
「…そうだっけ?」
その時二人ともお腹が鳴ったんでご飯にしたんだけど、
「…これって何て食べ物?」
見た事も食べた事もない食べ物だけど、食器の使い方を教えてもらいながらなんとか食べられた。
初めて見る物ばかりなんで楽しく説明を聞いていたけど、
「…疲れた」
さすがに色々ありすぎて疲れてしまった。
ドラゴンのお世話をするか考える暇もなく、布団でゆっくり眠りについた。
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