第2話 いきもの係─なにあのモフモフした生き物は?!

 荒野で人に会って、立派な建物に連れてこられた僕。

 言葉が通じるだけでもありがたいけど、見た事も無いような物が沢山あるし、書いてある文字も全然分からない。僕がいた国とは全然違うみたいだ。

「副隊長、おられますか?」

どこかの部屋へ入っていくと、僕よりも少し年上の女の人がやって来た。

「お、この子がさっき言っていたビーストテイマーの子?」

「はい。アレの世話にふさわしいかと思って」

「んー、アレは対応が難しいからねえ。最悪どうなるか」

 まあ、うちで預かるよ。そう言って僕はその人に引き渡された。

「君、名前と年は?」

「あっ! 僕はエリックと言います! 16歳です!」

「16…、道理で若いと」

副隊長と呼ばれた人は、何かを言いかけたけどその後黙って少し考えた後、

「じゃ、職場に案内するから付いてきて」

 そう言って部屋の外へ出た。すぐ左に曲がって奥の突き当たりへ。そこには扉があった。

「ここに入るのは特殊な方法が必要なんだ。特定の人と二人一組でないと入る事が出来ないんだよ」

 そう言ってどこからか鍵を取り出して扉を開ける。その先にはもう一つ扉が。同じ鍵を使ってまた開けると、賑やかな鳴き声が響いていた。

「うわあ…」

 そこは端が見えない位広い部屋で、数人の女の人とオーガらしき人が生き物にエサをあげたりしてお世話をしていた。そして、沢山の見た事が無い生き物が檻の中に種類毎に入っていたり、部屋の中をあちこち動き回っていたりした。ふと左を見ると、ケット・シーに似たような感じのモフモフした生き物が一ヶ所に固まってゴロゴロしていた。

 「か、可愛い!」

思わず触ろうとした時、

「むやみに触ると引っ掛かれるよ。気を付けて」

 副隊長と呼ばれた人に注意を受ける。

「は、はいっ!」

手を引っ込めて背筋を伸ばした。でも、可愛いなあ、あのモフモフした生き物。

「猫っていう生き物なんだ。ま、それはともかくこっちの部屋だよ」

 案内されて入り口から真っ直ぐ行った奥の部屋へ進む。こっちの扉には鍵が掛かっていないらしい。

 そこの部屋へ入ると、とてつもなく大きな檻があり、そこの中には…

「ド、ド、ド、ドラゴン!?」

赤いドラゴンがうつ伏せでこっちをじっと見ていた。ドラゴンなんて強いランキング上位に入るモンスターじゃないか!

「今日はもう遅いから顔合わせだけだけど、明日からの仕事は、コイツの世話をしてもらいたいんだ」

「む」

「む?」

「無理無理無理無理ー!!」

 後ろの扉から逃げようとしたけど、副隊長がいつの間にか回り込んで引き留められた。

「まあまあそう言わないで。何もずっとお世話をするわけじゃなくて、このドラゴンが転生するまでの一週間だけだから」

「それでも僕には無理ですー! 他の人を当たってください!」

 「弱っ」

 別の人の声がして、そっちを向くとメガネをかけたエルフの女性が手に書類を持って立っていた。

「副隊長、ビーストテイマーって言ってましたけど、この人お世話に向いてないんじゃないんですか? さっきから弱気な発言ばかりですし、私も足手まといは御免ですよ」

 …さっきから聞いていれば好き放題言っているなあ。本当の事しか言われてないけど。

 「まあ、引き受けるかどうかは一晩考えてからでもいいから」

 一晩考える時間をもらったとはいえ、僕、お世話を引き受けた方がいいのかなあ。どうしよう!?

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