獣使い《ビーストテイマー》の僕が何故かドラゴンのお世話を?!
東寒南
第1話 気が付くとオーガに追いかけられてたんだけど
沢山の花畑の中、僕は寝っ転がっていた。
起き上がって見てみると、見たこともない花もあるみたいだ。
なんだか良い匂いがそこかしこからしている。
ボーッとしながらモンスターと戦っていたのを思い出した。けど、周りを見ても仲間はいない。
「皆どうしたんだろう…」
あれ? そういや街道沿いで戦っていたはずだ! それに近くにこんな場所はなかったはずだ!
と、すると答えは一つ。
「…死んじゃったのか?」
死んだのなら仲間が生き返らせてくれるはず!
…多分かなり時間が経ったはずなんだけど、全然変わる気配がない。それどころか夕焼けが見えている。
「…見捨てられた!?」
ショックだ…獣使い《ビーストテイマー》はそんなに成り手が多くない職業だから冒険者によく雇われた。けど、僕はレベルが低かった。
もう少し経験値を積めばもっと多くの生き物を扱えたかもしれない。だからって生き返らせてもくれないなんてあんまりだ!
僕は立ち上がり、あてもなく歩き始めた。
しばらく行くと、あっちの方から人影が見える。その人の方へ向かっていくと、
「…オーガ!?」
頭に角が見えた。オーガだ! 食べられる前に逃げないと!
反対方向へ逃げているとオーガが何か喋っているみたいだ。でも、何を言っているのか分からない。
走り続けていって花畑を抜けて荒野に出た。
他の人影が見えた。
「た、助けて!」
なんとかその人の所までたどり着いた。が、喋っている言葉が全く分からない。
困った顔をしたその人は何か板を触っていた。
「えっと、あなた、私の言葉、分かる?」
カタコトで話しかけられたけど言葉が分かる、通じる!
「ぼ、僕死んでしまったみたいで、オーガに追いかけられて! 助けてください!」
「ゆっくり喋って。翻訳出来ないから」
ほ、翻訳? 言葉が通じてないのか!?
「ちょっと、ここで、待ってて」
そう言ってその人は前方の建物へ向かった。
少し経って戻ってきた。その人に見たことが無い形の腕輪を渡される。ここに着けるようにとジェスチャーで教えられたので着けてみると、
「言葉が分かりますか?」
「…通じます」
「これ、翻訳機も兼ねているので絶対外さないで下さいね」
腕輪を見ると、渡された時は無色だったのに腕に着けたとたんに灰色になり、数字が現れた。どんな魔法が使われているんだろう?
「あらー、灰色ですか。天国にも地獄にも行けませんねえ」
「…ええー!?」
「これ、黒だと地獄行き、白だと天国行きって決まりがあるんですよー」
「な、何でですか!?」
そう言われたからか、またあの板を触り始めた。
「…あなた、死ぬ直前にモンスターに頭をぶつけたみたいですねえ。ぶつかったモンスターもそれが原因で死んだんで灰色になったんだそうです」
「…そんなので!? あんまりだ!」
ショックで頭を抱えてしゃがみこんだ僕に、
「あー、でも転生まで少し時間があるので、罪を償う意味であなたにピッタリのお仕事があるんですが、どうですか?」
…仕事?
「人以外の生き物を転生までの間、お世話をするというのなんですが」
「やります! やらせてください!」
天国にも地獄にも行けない。それなら何でもやってやる!
ただ、直後にこの決意を後悔するとはその時僕は思わなかったんだ。
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