両親からのメール
彼の両親からメールが届いたのは1週間前のことだった。
そのメールを要約すると「こっちは元気にしているがお前は元気かい?気が向いたらいつでも顔を見せてくれ」といったいつもの内容だった。
彼は二十歳を過ぎた頃に家出当然のごとく実家を飛び出しており、それからすでに10年近くの時が経過していた。そのあいだ彼は両親に対して一切の連絡をとっておらず、定期的に届く両親からのメールもすべて無視していた。
彼は自分の両親のことが嫌いだった。
両親とは縁を切ったつもりでいたし、今回のメールも無視しようと決め込んでいた。
しかし、久しぶりに故郷の料理を味わった彼は、子供の頃にその料理を作ってくれた両親のやさしい記憶がフラッシュバックしていた。
そして次の瞬間には”ふと故郷に帰ってみたい”という気持ちが湧いてきた。おそらく、長い年月が彼の心や考え方を変化させていたに違いない。
「おふくろはもう……80歳になる頃か……」
生きているうちに最後に会ってみるのも悪くない、彼はそんなことを思ったのかもしれない。
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