【幕間】スポットライトは世界の注目

「なあ、ロイド。毎度のことながら、何でこうなるんだ?」

「僕に分かるわけないじゃないですか……」


 ゼオンは食事をしていた。マーロから戻った慰労会を兼ねた食事会であった。巨大な鍋が、煉瓦で作られた窯の上に置かれている。窯の下には空洞があり、薪を燃やして鍋の具材を煮ていた。今は具材が無く、湯を沸かしているだけであった。


「ただの食事会……だよな?」

「そのはずです……」

「ロイド……じゃあ何故に足を縛られたうえ、吊るされているんだ?」

「ゼオンさんが、ノア師匠の料理を酷評したからだと思います」


 ゼオンは、鍋の上にあった木の枝に吊るされていた。目の前にいるロイドが、紐を必死に引いている。この手が離されたら、ゼオンは鍋の中に飛び込むことになる。


「ロイド……。分かっているよな? 絶対に離すなよ?」

「分かってます……」

「ロイド! 何してるの? 早く、こっちの手伝いをしなさいよ!」

「は、はい! ノア師匠!」


 ゼオンの目の前で、無情にも、ロイドの手から紐が離れていった。ゆっくりと紐ら上に登り、ゼオンと地面の距離が近付く。


「ぁ゛あ゛っ!! あ゛っぢぃぃぃぃぃぃっ!!」


◆◆◆


 熱湯との格闘を終えたゼオンは着替えていた。日が暮れると少し肌寒い。風邪は引きたくないと、ゼオンは感じていた。不意にくしゃみがでた。風邪ではなく誰かの噂であれば良いと、ゼオンは身震いをしながら、足早に焚き火に向かっていた。


◇◇◇◇◇◇◇



 私には名前がない。

 家族も友人も、何もない。

 ただあるのはやるべき使命のみ。


 私は存在した瞬間から

 与えられた使命を、ただただ遂行する。

 

 ただ

 この使命にも飽きた。


 生命の幕が下りる

 幾度となく目にしてきた瞬間。


 私も幕を下ろしたい。

 私は、私の後継者になりうる器を見つけた。


 ならば、あとは誘うのみ。


     




  

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