【24幕】異端は先端への通り道
「だから! 何でそうなるんだ! 」
ゼオンは、声高らかに叫んでいた。納得がいかない。だが、周りが有無を言わさずに、しばりつける。ゼオンが繰り返す、嫌だと言う言葉は、誰も聞いてはくれない。
――ゼオンは、今、玉座に座っている。
◇◇◇◇◇◇◇
「私は、国王代理ですので、初代国王であるノア様が目覚めた以上、役目は終わりです」
ローレットの一言が、引き金となり、押し問答が始まった。クロスとローレットが、ノアに王冠を返上したときだ。ゼオンに飛び火してきた。
「私は、ゼオン様の仲間で有るまえに、家臣です。ですので、玉座につくことは辞退いたします」
それならば、ゼオンが国王になればよいと、全員が視線を向けてくる。ゼオンは、必死に手を振り、嫌だと主張した。
「俺は、エルフ族ではないぞ! 」
当たり前のことを叫んだ。ゼオンは、これならば最も正論で、断るには最適な事実ではないかと考えていた。
「さっき、『俺についてこい』って言ったらしいわね? ……結婚の申込みよね、ある意味」
おかしな方向に話が進みだしたと、ゼオンは嫌な予感を感じてしまう。ダリアめ、悪魔の様な目つきで、笑っているじゃないか。
「国王の夫であれば、国王になっても問題ないっすね。いや、生徒に先をこされるのは悲しいっすが、めでたいっすね! 」
カリフも、笑っている。目が、金貨になっているのは気のせいであろうか。仮に、国王になったとて、カリフの借金返済に、国費がでるわけはないと思うが……。あと、何故に、結婚したことになっているんだ。無茶苦茶にも、程がある。ダリアとカリフは、結託しているか、モルベガに買収されていないかと、疑ってしまう。
「ゼオンさん! おめでとうございます。これで、僕も自由になれます! 」
「助かりました〜。これで、モルベガの遺跡も調査し放題ですね」
いや、何が自由になれるというんだ。迷惑をかけたつもりはないぞ。ロイドをちらりと睨む。トラジェも自分の欲望を御しきれていない。口から、気持ちが飛び出しているぞと、突っ込みたくなる。この研究室には、常識のあるやつはいないのか。ゼオンは、悲しくてやりきれない気持ちであった。
「だから、何でそうなるんだ。絶対に、嫌だ!! 」
玉座に座らされ、よく分からない文書に、サインを書かされそうにならながら、ゼオンは最後の抵抗していた。小一時間の、攻防戦。ゼオンは、全身全霊で闘っていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「それであれば、仕方ありません」
ゼオンは、国王の地位をいずれ引き受けると約束した。今は、ゼオンの目的のため自由にさせてくれと付け加えた。国王命令ならどうだ、とも。
「私も、同行させてもらいますね」
ノアを、ゼオンの味方に引き込んだ。一緒に、冒険や、学院生活を楽しむのはどうだと説得した。国王として政治や国交に勤しむのは、他の適任者に任せた方が良いし、時代が違うから辞めとけと諭す。
「話は変わるが、解呪の方法はどうするんだ」
ゼオンは、本題を切り出すことで、自分の不利な話題を流すことにした。そもそも、モルベガに来た目的を忘れてはいけない。
「自己封印について研究したときに、喋る動物に出会いまして……」
ゼオンは、目を見開いていた。気がついたら、ノアの肩を掴み、激しく揺らしていた。喋る動物。ゼオンの中にいる、幻獣族ではないだろうか。特徴は、白馬。額に一本の角。アレイオーンが、語りかけてくる。
――ユニコーンでございます!!
ゼオンは詳しい説明を、ノアに求めた。ノアが自己封印の研究をしていたとき、ユニコーンとであったらしい。ユニコーンの知見を取り入れ、異界についても調べ、一冊の魔導書にであった。正確には、
完璧な封印魔術を完成させた。ノアは、最初にユニコーンを封印したという。ユニコーンも仲間を探しているが、探すより待つ方が早いと、封印を依頼してきたという。結果は、ノアを見れば明らかだ。成功しているのであろう。
――ユニコーンであれば、治癒、解呪、お手の物でございます。
アレイオーンのお墨付きである。では、肝心の封印したユニコーンは、どこだとノアに問いかける。魔術で作った迷宮の奥深くに、封印した魔導石を置いてあるという。
「うわ〜! 帰らずの迷宮ですよ! モルベガで有名な遺跡です! モルベガの魔宮!! 」
トラジェの声が、一音高くなった。遺跡と聞いて興奮したなと、ゼオンはトラジェを見ていた。帰らずの迷宮。足を踏み入れたら最後。二度と戻れない遺跡らしい。トラジェの遺跡情報の範囲に驚かされる。だがそれ以上に、いったい何を作ったのか。ノアの思考、技量にも驚かされる。
ゼオンはノアに案内を頼んだ。トラジェは、ついていきたいと頼んできた。身の危険より、探究心、仲間への想い。ゼオンは、トラジェのそんなところ気に入っている。迷宮創作。異端な魔術かもしれない。だが、何年か先には最先端の魔術かもしれない。異端は最先端への通り道。ゼオンは、迷宮を楽しむかと企んでいた。
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