唯一は別たれその先に

創世

 彼は暇を持て余していた。

 余りにも長い時間、悠久の時の中で無聊むりょうを持て余していた。

 彼はあまりにも何もなかったから身じろぎをした。

 彼が身じろぎをすることによって偏りが生まれた。

 その偏りによって均衡の取れた場は不均衡になった。

 そしてまた永い永い時間が流れる。


 暇を持て余していた彼はふと気付く。

 何かが集まりつつある事に、彼はそれを認識した。

 彼は初めて認識という思考動作を行った。

 宇宙が定義された瞬間である。

 全知全能零知零能だった彼は、全知全能よりも小さくなり、零知零能よりも大きくなった。

 彼は彼自身を認識した。

 彼は喜んだ。

 宇宙はこんなにも美しかったのだと。


 矯めつ眇めつ眺め続けた。

 そうすることで宇宙は、空間を広がり続けていった。

 それと同時に、全知全能より少し小さく、零知零能より少し大きい彼は、より小さくより大きくなっていた。


 有限なる無限の宇宙、限りある無限に広がる宇宙。


 集まっていた何かは後の世で魔素と呼ばれる物となった。

 そして、この魔素と呼ばれる前の何かは後に摩素と呼ばれることになる。


 不可思議なもと、魔素は、最も素晴らしきもと、摩素で構成されている。


 宇宙は、もっと素晴らしい物を求めた。

 より不均衡な素晴らしい世界を。

 宇宙は考えた。またより小さくより大きくなる。

 これら自身が不均衡になる能力を持てば良いと。

 引力と斥力が生まれた。

 これにより、宇宙はめまぐるしい変化を迎えることになった。


 宇宙は事あるごとに介入し、様々な理を宇宙に齎した。

 その度に彼は小さく大きくなっていた。

 宇宙の感情が満たされる度に、出来ることが増え、出来ない事が増えていった。


 宇宙は広大だ。

 知覚し認識し、それを記憶する。

 広大であるが故にそこにも不均衡が生まれた。

 宇宙は思った。

 なんて素晴らしい物だと。これをもっと不均衡に素晴らしい物にしようとした。

 そして宇宙は、宇宙を残し彼等を生み出した。


 広大に広がり不均衡に蓄積されていた経験は、彼等に能力の差を齎した。

 生まれた彼等は、その能力差を素晴らしいとは思わなかった。

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