第3話・あなたさまを命かけてお守り致します


 わたしは生まれて初めて男性に抱えあげられてびっくりした。これは憧れのお姫さま抱っこというもの。実は密かに憧れていたりする。

 一応、花の女子高校生でありながらそんな機会に全く恵まれなかった自分には過ぎた願いだった。


(もう死んでも良いかもわたし)


 そんなことを考えていたら、頭の中に不貞腐れたような男の子の姿が浮かんだ。


(冗談だよ。本当にそんなこと望むわけないじゃん)


 心の中で彼に言えば、彼は渋々引き下がったような気がした。そういえば梵天は今回現れない。どうしたんだろう?

 考え事をしていると優男が、わたしを抱えたまま共の男達に指示していた。


「一旦、私と姫さまは寺へ戻る。貴殿らは先に城に向かってくれ」

「はっ」


 他の人いたんだ。わたしは自分を抱えあげる優男しか目に入ってなかった。今さらながら自分達を取り巻くギャラリーに気が付いた。

 優男と同じ姿をした数人の男たちは、皆わたし達に一礼して馬に乗り駆け去って行った。


「輿を米沢城から迎えに来させれば良かったですね。姫さまの御好意がこんな形で仇になるとは……それがしの不徳。申しわけありません」

「……ごめんなさい」


 事情が良く分からないが、なんだか自分がいけないことをしたように思われて謝まれば優男が悔しそうな顔をしていた。


「あなたさまは何も悪くはありません。こちらの不手際です。せっかくの目出度い日に。このようなこと……おそらく姫の入城を心よく思わぬ輩の仕業でしょう。でも御心配はいりません。私が傍についております。あなたさまを命かけてお守り致します」


 さらりと物騒なことを言ってのけた優男は笑顔を向けて来た。わたしは彼の笑顔に問題を棚上げすることにした。


 どうせ夢の中の話だもの。どうにかなるでしょう。わたしは深く考えていなかった。

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