第6話 模擬戦

 歴史の授業がひと段落したところで再度質問の時間を設けられたが、普段はよく質問をするジェーンも昔のこととは言え世界の情勢と人族の立ち位置についての情報を飲み込むのに精一杯のようで、特に質問することもなくそのまま授業は終了、自由時間となった。


「よっしゃー!自由時間だー!今日の授業も面倒臭かったな!」


 待望の自由時間になってマークは真っ先に中庭に出ていこうとする。


「そんなこと言って、また内容をほとんど覚えていないんでしょ?そもそも聞いていたのかも怪しいし。」


 ジェーンが後に続きながらさらりと嫌味を言い、先を進んでいたマークが振り返りながら言い返す。


「ちゃんと聞いてたって!まあ確かに少しカインに質問したけど、それもちゃんと授業を聞いているからこそだろ!」


「マークがちゃんと聞いてたの?珍しい。」


「そんなことで本気で驚くなよ!失礼だぞヘレン!」


「でもマークが普通に授業受けるって珍しいし。もしかして具合が悪い?ゆっくり休む?」


 マークが真面目に授業の話を聞くのは非常に珍しいため、ヘレンが本気で体調の心配をする。


「いや、マークは大丈夫だよ。むしろ今休ませた方が怒るんじゃないかな。」


「何?マークがまともな理由を知っているの?」


「多分、ジャン兄が自由時間に護身術を教えてくれるって言ってたから、授業をちゃんと聞いてなくて前みたいに居残りになって自由時間が無くなるのを嫌がったんだよ。」


「ああ、なるほどね。」


 昨晩、ジャンが自由時間に護身術を教えると言っていたなとヘレンとジェーンも思い出す。


「ほんと、男の子って体を動かすのが好きよね。」


「何言ってんだジェーン、武術ってかっこいいだろ!それに今までは教えてくれって言っても聞いてくれなかったけど、昨日の夜は院長先生も止めなかっただろ!つまり許可が出たってことだ!」


「アンタ、カッコイイからなんて理由で教わりたいの?飽きっぽくて、しかも微妙に臆病だから前に出て戦うのは無理があるでしょ。それでいくと魔法紋があるのはちょうどいいわよね。ジャン兄の言うとおり護身術程度で済むんだもの。」


「誰が臆病だよ!馬鹿にするなよ!?」


 そこでまた言い争いを始めるマークとジェーン。ヘレンもそれを仲裁するために足を止めてしまう。カインはいつものことだと先に進み、一足早く中庭に到着する。中庭にはすでにジャンが全員の体格に合うよう木剣を数本持ってきて待っており、カインが着いたところで意外そうな声を上げた。


「あれ、カインが先に付いたのか。てっきりマークが一番乗りだと思ったけど。」


「言い争いがヒートアップしてるから置いてきた。でも直ぐに来るよ。それより、ジャン兄も今日は仕事早いね。」


「ああ、むしろ休むようにも言われたんだけどな。子供にしては働き過ぎだって。でも、落ち着かないから忙しい朝だけ手伝ってきたんだ。そもそも、そういう理由があったから今日は護身術を教えるって言ったんだ。それがなかったら今も手伝いに出てるよ。」


「そういえばそうだね。」


 ジャンとカインがそんな話をしている間にカインの言うとおりマークたちが中庭に姿を見せる。


「カイン、先に行くなら言ってくれよ。」


「目的地は同じなんだし、マークも楽しみにしてたんだからすぐ来るかなって。」


「はいはい、それじゃ始めるぞ。最初は準備運動からだ。ちゃんと言うこと聞かない人は今後木剣を触らせないからそのつもりで。」


 ジャンが手を叩き注目を集めると準備運動をするよう指示する。最初から木剣を使わないことにマークが不満そうにするも、続くジャンの言葉に不満を引っ込め、それを見たジャンは満足そうに頷き準備運動の仕方を教える。軽く体をほぐし終えればマークの待ち望んだ木剣を使うことになった。


「さて、偉そうに護身術を教えるって言ったけど、実はそんなにたいしたことを教えることはできないんだ。そもそも僕が教わってるのは木剣を使った剣術だから、基本のことを教えるだけで、悪いけどそれ以上のことは自分なりに探るか、他の人に教わるかしてほしい。」


 そう言ってジャンは上段から振り下ろしの素振りから教え始めた。他にもさまざまな構えから素振りを行い、ひとりひとりの動きを見ていき、刃筋に対して剣刃がまっすぐなるように、また腕の力だけで振っていることなどを指摘していった。


 ジャンは魔法紋を持っていないので使える魔法は身体強化のみであり、それを活かせる護身術、剣術は大したことを教えられないと言いながらも、その指導は中々堂に入ったものであった。


「マークは腕紋を持っているからか、やはり剣の軌道がブレずにしっかり振れているな。カインは体を使って上手く素振り出来ていたし、ジェーンとヘレンは振り終わった後体が少し流れているが剣刃の向きがどの構えからでも綺麗だ。それじゃ、次は実際に斬ってみようか。」


 そう言って木剣と一緒に持ってきていた、グニャリと柔らかいゲル状の何かを持ち出した。砂や小石が中に混ざっていて一見すると汚い印象を受ける。


「これは剣を振る際の的になるものだ。真っ二つになってもくっつけることができるから、遠慮なく剣を振れ。これから僕がみんなに向かって投げるから上手く斬ってみてくれ。他の人はやってる人の動きをちゃんと見て学ぶこと。それも武術の修行の一つだからね。それじゃまずはマークから。」


 実際に斬る練習となったが、腕紋持ちのマークが力強く木剣を振るいゲルに叩きつけると、ゲルは真っ二つになりながら飛んでいく。飛んでいったゲルを何度もジャンが回収に行くのも大変なので、見学の三人が周りに均等にバラけて飛んできたゲルを回収することになった。そうして斬ってはとんだゲルを回収、ジャンに渡してくっつける、を繰り返し、10回ほどで次はカインに交代する。


 しかし、カインがやってみるもゲルの中心を捉えた場合完全には斬りきれず、端を斬った時にようやくゲルを二つに分けることができた。


「うわ、これゲルに当たると急に重くなるな。マーク、よくこんなの振り切れたね。」


「俺は腕紋持ちだからな。カインも中央紋の腕力でギリギリ斬れてるじゃねーか。」


「カイン。素振りの時みたいに全身を使ってごらん。今のカインは少し腕の力だけで振ってるように見える。」


 見学しているジャンにそう指摘され何度か確認するように木剣を振った後、最後の10回目のゲルをジャンに投げてもらう。飛んでくるそれをしっかり目で追いかけ、しっかり踏み込み体を捻ってゲルの中心目掛けて剣を振るう。狙い通りゲルの中心を捉えた木剣は一瞬その弾力に押されるもそのまま振り切りゲルを真っ二つにしてみせた。


「おお~。こういう感じなんだ。」


 カインはどこか面白そうな声を上げて手に持った木剣を眺めていると、すぐにジャンに促されて次のヘレンに場所を譲る。ヘレンが斬ったゲルが飛んで来ればちゃんと回収するがそれでもどこか上の空であった。


 その後、勉強に来ていたヘレンとジェーン以外の近所の子供も興味を引かれて中庭に出てきて、木剣を交代で使うこととなりもう一度ゲルを試し斬りすることはできなかった。


「模擬戦もできればと思ったけど、僕は回復魔法を使えないから今はできないな。院長先生やマリーがいるときに改めて許可を取って模擬戦をしてみようか。」


 ジャンが最後にそう締めくくり、昼食の時間になったため食堂に行く。中庭にいた全員の子供が孤児院で昼食を取ることになり、体を動かしていつもよりお腹が減っていた子供たちは、最初おしゃべりを一切せずとにかく食事を頬張っていた。そしてある程度空腹が満たされるといつものように騒がしくし始める。


「勉強は俺が一番できないけど、剣術は俺が一番だったな!」


「腕紋のおかげじゃない。技術は同じようなものでしょ。」


「それに斬るときの体の動かし方はカインの方が上手だったよ。マークはちょっと腕の力に頼りすぎだったね。まあ、自分の長所を活かしているわけでもあるから悪くないけど。腕紋の子はみんなそんな傾向があるって自警団の人も言ってたかな。」


「ジャン兄、僕は?こうしたほうがいいって何かある?」


「う、うん・・・、何かいつもよりすごい気迫。・・・コホン。そうだね。気になったのは――。」


 そして体の動かし方を褒められたカインは逆に改善する点をジャンに尋ねる。その目は悪い点を聞いているというのに輝いており、気圧されたジャンは軽く仰け反りながら言葉を返す。


 そんなカインの様子をマークとヘレン、ジェーン、そして同じく昼食を食べに食堂に来ていたパトリックが少し驚いたように見ている。


「ふむ・・・。もし剣術に興味を引かれたなら自警団の指導があるときに剣術の指導があればそれを見学させてもらうといい。まだカインの歳だと指導を受けることはできないが、見るのも武術の修行の一つというからな。それと先程ジャンに聞かれたが、午後は私がいるから模擬戦もして構わんぞ。」


「おっ、まじか!それじゃあカイン、摸擬戦やろうぜ!」


「いいよ!腕紋があってもそう簡単には勝てないって証明してやる!」


「私はやめとこうかな・・・。模擬戦ってことは痛いわけだし、わざわざ痛い思いしたくないし。」


「アタシもヘレンに同意ね。それじゃ一緒に本でも読んでましょう。」


 食事が終わり片付けの後、子供たちは2グループに分かれて外で模擬戦と中で読書など、それぞれ違う行動を取ることとなった。普段の子供たちは、マークのグループかジェーンのグループかで別れる。中庭に着くとジャンが倉庫から模擬戦のための防具を出してくる。身体強化を習っていないので最低でもこれを着けないと模擬戦は許可できないらしい。少し大きめのサイズの防具を着けると審判としてジャンが同じように防具を着けて間に立つ。いざとなれば強引に体を割り込ませ制止するためだ。


「ちゃんと防具は着けたね?それじゃ始め!」


 開始の合図と同時にマークが飛び出した。午前中にやったはずの素振りも忘れてただ振り下ろす一撃をカインが横にずれて回避する。そのまま姿勢が崩れたマークに一撃入れようとするも、マークはその状態から腕力任せで更に追撃する。カインは体勢が崩れた上に腕だけでの一撃だからと受け止めようとするが、想像以上の力で押されて思わず後ろによろめき、マークはその隙を逃さず当てること重視の腕だけの振りで連撃を重ねる。体勢も関係なく繰り出されている振り回すだけの連撃は本来ならば大したものではないが、子供同士の初の模擬戦で腕紋を持った者の攻撃である。受け止めるカインの腕が衝撃で徐々に痺れていき、ついに木剣を弾き飛ばされる。


「そこまで!」


 そこでジャンが終了の声を上げ、カインとマークは息を上げながら尻餅をつく。


「俺の勝ち、だな !」


「後でもう一回!」


「いいぞ!けどあと少し休んでからだな。何か想像以上に疲れた気がする。」


「僕もいつもより疲れてる。今も息が続かないや。」


 初めての摸擬戦ということで、お互いが緊張して必要以上に動きが硬くなることで、5分ほどの全力運動ですぐには2戦目をできないほど疲れてしまっていた。その間に他の子供に防具を渡し、次の模擬戦の見学をすることにする。


 他の子供も同じように1戦すればひどく息切れを起こし連続ではできなくなる。人数がいるのでちょうどいいと順番を回していく。若い子供ということで、ジャンも含めて一巡する頃には最初に戦ったカインとマークの上がっていた息はすっかり落ち着いており、中庭が空けば再び模擬戦を始める。


 子供達全員でそれを繰り返していくが、怪我をすることも多々あったのでその度に院長室にいるパトリックを訪ね治療してもらう。およそ10回ほど怪我人が向かった後は、怪我の頻度が多いということでパトリックは中庭に面した部屋に仕事を持ってきて窓際で作業し始めた。何度も怪我人が出ると近所の子も預かっている以上流石に不安になり、いつでもすぐ駆けつけられるようにしておきたかったのだ。


 全員加減というものを知らず、日が暮れるまで続けたことで最終的に全員で50戦ほど行ったところでジャンとパトリックに終了を言い渡された。後片付けをしているとちょうど中にいた子供たちもそろそろ家に帰るため出てきたところにはち合わせる。


「あんたたち、ずっと模擬戦してたの?」


「いいだろ、自由時間に何したって。お前たちこそずっと中で本読んでたのかよ?」


「ええ、そうよ。悪い?」


「何で二人ともそんなに喧嘩腰なのさ・・・。」


 ジェーンもマークもお互い相手に対して呆れたような視線、口調で話し、それがまたお互いの癇に障ったのか険悪な空気になる。口を開けばすぐに口喧嘩しそうになる二人にカインも呆れた視線を向ける。


「なになに、どうしたのこの集まりは?模擬戦!?今日したの!?アタシにも話聞かせて!」


 そこへ朝から自警団に付いて仕事を教わっていたマリーも孤児院へ帰ってきて、入口がさらに賑やかになる。マリーはその明るさから近所の子供からも非常に慕われており、帰宅しようとしていた子も足を止めて彼女の方へ集まる。そしていつまで経っても騒がしい孤児院の入口の様子を見に来たパトリックが早く帰るよう強制的に解散させるまで子供たちのおしゃべりは続いていた。


 帰宅する子供たちをちゃんと最後まで見送った後、パトリックはジロリとマリーを軽く睨む。


「お前が引き止めたわけではないだろうが。それでも少しは年上として配慮するべきだったな。もうすっかり暗くなってしまったぞ。」


「う・・・はい。ごめんなさい。」


 マリーが反省しているのがわかったためパトリックもそれ以上は何も言わず、その後全員で夕食の準備をしてから食堂の席に着く。


 食事を始めてからの話題はやはり今日初めて行った模擬戦についてだった。


「へぇ~、マークが勝ち越してるんだ、すごいじゃん!カインもジャンが褒めるくらい動きがいいみたいだし二人とも将来有望だね!アタシも自警団員になるから、有望な後輩がいるのはうれしいよ!」


「後はちゃんと努力を続けられるかだな。最初のうちはよく伸びるから成長も実感しやすいけど、続けるうちにほんの少しずつしか成長しない時も必ず来るから、その時にもちゃんと努力を継続できないと。」


「わかってるよ。マークに負けっぱなしなのも悔しいし、剣を振るのも楽しいから頑張る。」


 いたって普通の様子だが、その言葉に込められた熱を感じ取ったマリーは意外そうに声を上げる。


「何だか、カインは剣術にハマったって感じだね?」


「うん。模擬戦の合間も素振りをして何度も動きを確かめてたり、すごく熱心だったよ。そうだ、マリーなら知ってるかな?中庭でやってる自警団の指導で、剣術って教えてたっけ?」


「うん?・・・あぁ、そういうこと。確かに剣は自警団の中でも使う人がまあまあいるからねぇ。確か指導の時も、無属性魔法の身体強化を教えてるところで模擬戦みたいなことをしてたはずだから、見て学ぶにはちょうどいいと思うよ。今でも近所の子達とかが邪魔にならないところで見学してたはずだから。」


 マリーからも有益な情報を聞くことができたカインは傍から見てもわかるほどに気分を良くして夕食を食べ進める。


 自警団では自衛として何かしらの武器を持つことが多いが、その中でも剣を持っている人は二番目に多い。一番多いのは槍であり、これは武器の金属部分が少ないからというのがある。昔に比べれば遥かに生活が安定してきたといっても、やはり下民街は貧しく資材も設備に優先して回されるので潤沢にあるというわけでもないため、金属は高価になりやすい。自警団内で普及している槍は柄の部分が木材でできており、穂先部分のみ金属でできている。中には総木製の槍を使う人もいる。武器の所持は自警団でも自由だが、あくまで費用は自分持ちであることからこういった考えが多くなっている。


「ジェーンとヘレンは模擬戦しなかったんだ?ジェーンなんかはマークと張り合ってたかと思ったのに。」


「二人は他の模擬戦をしなかった子と本を読んでたみたいだよ。もうすぐ無属性魔法の練習も始まるからその準備じゃないかな?」


「そっか。そう言えば5歳ってなるとそろそろだっけ。それにして剣の模擬戦は男子が多くて、本で魔法の勉強は女子が多いか。性別で結構わかりやすく分かれたね。成長しやすいっていうのが本能でわかるのかな?」


「まあ、実際は少数とは言え男女混ざってたわけだし、必ずしも性別の得意不得意がそのままって訳じゃないだろうけど、否定しきれないかなぁ。」


 性別と得意不得意の話をするマリーとジャンに、因果関係がわからないカインとマークは首を傾げる。それを見たマリーはそう言えばと気づいたように手を叩く。


「そっか、二人はまだ性別ごとの成長の向き不向きについてまだ習ってないんだっけ。それじゃ説明ついでにちょっとした授業をしよう。ジャンが。」


「・・・え、そこは自分じゃないんだ。いや、まあいいけどさ。院長先生、これって僕が今教えてもいいんですか?」


「ああ、構わない。一体どれだけ上手く教えられるのか楽しみだな。」


 パトリックに確認すると冗談交じりでプレッシャーをかけられ、ジャンは僅かに顔が引き攣る。


「ハァ・・・。それじゃ最初に簡単に説明すると、男の人は身体能力、女の人は魔力が成長しやすいんだ。身体能力が成長しやすいっていうのは目で見ても判断できるから分かりやすいよ。近所の大人たちを思い出してごらん。男の人の方が体に筋肉がついてるだろ?」


 ジャンの言葉に近所のおじさんおばさんを思い浮かべると、確かに体が鍛えられているとひと目で分かるのは男性の方が圧倒的に多い。


「逆に女の人の魔力が成長しやすいっていうのは一見してもわかりづらい。だから昔、いろんな種族、いろんな業種でデータを取ったみたいでね。男性で最も魔力量が多い人は、女性で最も魔力量が少ない人と同等だっていう、結構衝撃的な結果が出たらしい。まあ、その結果が全てじゃないだろうけど、少なくとも傾向は調査の通りだろうね。この傾向は魔力放出量や干渉力、回復速度など魔力に関わること全てに当てはまってる。」


 そこまで説明するとジャンは一度パトリックに「これであっているか」と視線で確認を取る。パトリックが一度頷いたことで、ジャンは少しホッとした様子で説明を続ける。


「それと男性が成長しやすい身体能力っていうのは、魔力強化なしでの身体能力のことだね。だけど無属性魔法の身体強化は魔力放出量によって効果が変わる。確か、算術は習っている最中だよな?身体強化は掛け算だ。素の身体能力に身体強化の強化倍率を掛ける。ただ、魔力による強化倍率の方が効果は大きいから、強化込みだと身体能力も女性の方が結局強くなる。

そのせいなのかはわからないけど、昔の種族間交流していた時代に集計した実戦での戦死率は男性の方が高い。もし、将来自警団に入りたいなら、強くなることを、努力を忘れちゃダメだ。」


 その説明を受けてカインとマークは自分の将来に今から限界を突きつけられた気がして将来が不安になってしまう。


 そうして微妙な空気感になったまま夕食を終える。孤児院では自分の将来のことを自分で考えるよう教えているためパトリックも特に何かを言うことはせず、今もカインたちは漠然と考えていた『自警団に入る』という曖昧なビジョンついて、グルグルとまとまらない考えを繰り返している。


 二人の様子を見てジャンは少し伝え方が悪かったと後悔し、マリーも説明を投げて無責任だったと反省する。既に伝えてしまった以上時を巻き戻すことはできないため、それならばどんな結論を出しても支えてみせると決心し。ジャンマリーは考え込む二人を見守るのだった。

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