第17話 実技試験 ~殺し合い~
「さぁ、次の試験は皆さんお楽しみの実技試験だ!」
ゴーレムの肩にチョコンと乗った少年がそう言った。
年はデビッドと同じくらいだ。
無邪気な甲高いキンキン声が僕の耳朶を打つ。
「実技試験の試験官を担当するジョンだ。魔王軍のモンスターマスターさ」
ジョンはシルクハットを取り、居並ぶ受験生に向かって一礼した。
おかっぱの茶髪が前に垂れた。
「おい、ジョン。自己紹介はいいからさっさと始めろよ。僕たちずっと待たされてイライラしてんだ!」
デビッドが口をとがらせる。
まるで友達にじゃれつく様に文句を言う。
「分かった。分かったよ。デビッドは相変わらずせっかちだなあ。いいかい、まずは試験内容の説明をするよ」
僕が到着するまで、皆、試験会場である魔王城の中庭で待たされていた。
そう、僕が別室から解放されるまで。
◇
つい一時間前。
別室と呼ばれる石造りの部屋で、僕は鎖につながれていた。
目の前で不合格になった受験者が次々と消されて行く。
消されて行くというマイルドな表現にしたいほど、殺され方が残酷だった。
「許してください! 魔王城のことは誰にも言いません!」
懇願する冒険者たちをモンスターたちが八つ裂きにする。
人間の元に戻す訳には行かない。
魔王城の内部を漏洩させるわけにはいかないからだ。
「リアーナさん……」
彼女は今頃、僕のことで試験委員会ともめているのだろうか。
どちらにしても、僕の命は風前の灯火だ。
「コウイチロウ!」
バン!
と扉が開き、黒髪の少女が飛び込んで来た。
「リアーナさん!」
え?
彼女が僕の胸に顔をうずめていた。
「おおっと、すまん、すまん。ちょっとつまずいてな」
彼女は身を離し、こほ、こほと咳をしながら恥ずかしそうに顔を背けた。
そして、
「お主、どんな名前がいい!?」
「え?」
意味が分からない。
不思議がる僕に、リアーナはそれまでのことを話した。
「すいません。僕のミスで……だけど、名前なんて……すぐには……」
「よし。我輩がお主にふさわしい名前を試験終了までに考えておく!」
リアーナはうんうんと、得意気に頷きながら腕を組んだ。
僕の名前はタケシが付けてくれたものだ。
それを変えることになるのか……。
◇
「この中庭をステージとして、その中で受験者同士で殺し合いをしてもらうよ! 最後に残った一人が次に進めるからね!」
ジョンは満面の笑顔でそう言った。
実技試験と言う名称から、そう言った内容を皆、想像していたのだろう。
驚いた顔をしている者は少ない。
辺りを見渡すと、僕を含め受験者は20人いる。
この20人で命の取り合いをする。
僕は自然とデビッドの横にたたずむ、黒装束の少女に目が行った。
恐らくこの中で一番強い。
僕の直感がそう伝えて来る。
ゾクッ!
彼女の視線が僕の瞳に突き刺さった。
その瞬間、全身に鳥肌が立つ。
僕は目を背けてしまった。
だめだ。
リアーナには悪いが、黒装束の少女がいる以上、この先に進むことは不可能だ。
つづく
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