第15話 個人的な理由
己の力を試したい。
ただそれだけ。
それだけの理由で私は人間から離れ、魔王軍に志願した。
「シャキーラ、君なら採用間違いなしだ。僕が出会った中で君は一番の逸材だからな」
銀髪の少年、確かデビッドとかいう名前だったか。
街で彼に声を掛けられた時、ついに来たかと思った。
魔王軍に志願するという理由でギルドを抜けるとギルマスに告げた。
ギルマスは私に考え直すようにと懇願して来た。
何が不満だ?
ギルドでの報酬、地位を良くしてやろう。
ギルマスの提案を私は無視した。
人間の世界では刺激が足りない。
魔王軍の方が面白そうだ。
全ての頂点に立ちたい。
そう素直に言ってやった。
「ならば、我々はお前の敵だ」
ギルマスは切り掛かって来た。
私はそれを一刀両断にしてやった。
そして、今、ここにいる。
「あいつはどうなるんだ?」
「あいつ?」
「君の姉が連れて来た冒険者だ」
「ああ、あの人か。残念ながら彼は不合格。ここでジ・エンドさ」
デビッドは首を狩っ切る真似をした。
つまり、彼は死ぬということか。
「もったいないな」
彼からはあふれ出る才気を感じた。
もしも同僚になれたらお互いを高め合えるライバルになれると思った。
そして、いずれ戦うことになると思うと、久々に胸がときめいた。
「シャキーラ、次の試験は筆記試験の比じゃないくらい、非情で過酷なものだよ。ま、君なら安心だけどね」
次の試験会場に到着した。
そこは魔王城の中庭だった。
恐ろしく広い場所だ。
森や沼地、岩山がある。
私は脇差からクナイを取り出し、クロスで磨いた。
恐らく、次は血を見る様な戦い。
「おかしいな、もう試験官が現れて、試験の説明があってもいい頃なんだが……」
デビッドが首を傾げる。
その時、森の中からゴーレムが現れた。
体長5メートルのそいつの肩には、小さい人間みたいなのが乗っている。
シルクハットにタキシードのそいつが口を開いた。
「実技試験にようこそ。試験官のペイスだ。すぐに試験と行きたいが、もう少し待ってくれ」
受験生がざわついた。
が、すぐに静まった。
皆、それぞれの得物を手にし手入れし始めた。
実技試験という言葉に皆、覚悟をし始めた。
「試験委員会側で何かあったのかな?」
デビッドは首を傾げた。
「やはり、彼をどうするかでもめているのだろう」
私は誰に語るともなく、そう言った。
つづく
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