第13話 生意気な弟がムカつく!
受験生控室は緊張に包まれていた。
次の試験に進めるかどうか、あと10分で発表がある。
進めなかった者は……
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
銀髪の少年がリアーナに話し掛けて来た。
この少年は確か、黒装束の少女のリクルーターだ。
「無視すんなよ。お姉ちゃん!」
少年はリアーナのスカートの裾を摘まんで揺らし始めた。
リアーナは不機嫌そうにそっぽを向いたまんまだ。
こいつの年は10歳くらいか?
子供と言ってもモンスターなのだろうけど。
それにしても、リアーナに負けず劣らず可愛らしい顔だ。
というか、彼女にどことなく似ている。
ん?
似ている?
「我輩の弟、デビッドだ」
「え?」
弟?
ということは、魔王の息子か。
リアーナは嫌そうにデビッドの頭をはたいた。
「いてぇな!」
「公衆の面前で我輩のスカートをめくろうとするな!」
睨み合ったかと思ったら、今度はお互いそっぽを向いた。
「これが、お姉ちゃんの連れて来た冒険者か?」
デビッドは僕を指差しながら言う。
「僕みたいに有能な冒険者を連れて来ないと、パパに怒られるよ」
デビッドは黒装束の少女を指差しながら、舌を出した。
少女は全てを無視し目を閉じていた。
「黙れ! コウイチロウは逸材中の逸材だ!」
「自分好みの奴連れて来ただけじゃないか! また僕に負けるよ。これで10連敗だね」
「うるさいっ!」
リアーナが顔を真っ赤にしてデビッドの頭をはたく。
「うぇーん! お姉ちゃんがすぐ暴力振う!」
デビッドはウソ泣きしながら黒装束の少女の背後に隠れ、あかんべーする。
この姉弟かなり仲が悪い様だ。
そして面倒なことに、弟の方が少し優れている様だ。
「おい! コウイチロウ、我輩のために絶対合格しろよ!」
我輩?
今、我輩のためって言った?
リアーナは眉根を寄せ僕を睨みつけた。
そして、受験生控室にオークが入って来た。
手に数字が書かれた紙を持っている。
「筆記試験の合格者を発表する! 数字を呼ばれた者が次の試験に進める!」
オークの声が響いた後、部屋が一瞬沈黙に包まれた。
「3番、10番、16番……」
僕は呼ばれなかった受験生を見た。
両手をだらりと下げたままうなだれる者。
膝から崩れ落ちる者。
彼らの未来は今、終わった。
「80番、81番、91番……」
僕の番号が近づいて来る。
大丈夫。
受かっているはずだ。
「98番。以上!」
え?
僕は思わずリアーナを見た。
彼女の黒い瞳には動揺する僕の顔が映り込んでいた。
「なっ……なんで!? なんで!?」
カチカチと音がすると思ったら、自分の歯と歯が当たる音だった。
僕は震えていた。
「我輩の目が曇っていたのか」
リアーナは目をこする。
瞳が潤んでいた。
「では、合格者は次の試験会場へ! 不合格者は……」
「うわあああ!」
僕はホブゴブリンに羽交い絞めにされた。
別室に連れて行かれ殺される。
つづく
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