第37話 赤い死神と暴風王女はインディオのために反乱に立ち上がりました

一方、こちらはジャルカに新大陸に転移させられた、アレクとジャンヌ。

二人はいきなり真っ暗な中に転移させられていた。


「イテッ」

「ジャンヌ重い。ぎゃっ」

重いという所に反応してジャンヌがアレクを蹴り上げた。

それがアレクの股間にヒットしていた。


痛さに悶絶するアレク。


あまりに痛そうにするアレクに


「大丈夫か」

思わず、ジャンヌが聞く。


「だ、大丈夫なわけ無いだろう」

アレクがあえぐように言った。


「おいっ、新入りか」

奥から声がする。


「えっ」

他に人がいると思わなかった二人は驚いた。


よく見ると暗がりの中に10人くらいの者がいる。


「お前らも捕まったのか」

別の男が言う。


「おいっ、貴様、髪が赤いってことは白人か」

男の一人が言った。


「何だと」

牢の中が急に殺気立つ。

「そっちは白人の女だ」


「おいおい、白人かって、俺の中にもモンゴロイドの血が交じっているぞ」

アレクがどうやら牢の中にいるのを感知して言った。

周りはどうやらモンゴロイドのインディオらしい。


「はんっ、ハーフで奴隷の仲間入りなのか」

「奴隷って、ここはどこだ」

男の言葉にアレクが聞く。


「何言っているんだ。ビッグゲートの奴隷市場の地下牢の中だ」

「ビッグゲートって」

ジャンヌが聞く。


「何ふざけている。新大陸の中の貿易港だろう。ここで買われれば新大陸のあらゆる所に送られるのさ」

「最近は旧大陸にまで送られているそうだがな」

「でも何で女がこんなところにいるんだ。女は娼婦として白人らの相手をされるそうだぜ」

「ここにいるということは俺達の相手をしてくれるっていうことか」

「では早速に」

ジャンヌに手を出そうとした男は一瞬でジャンヌに殴り飛ばされていた。


「おのれ、生意気な」

「目にもの見せてやるぜ」

男たちが二人に襲いかかったが、1分後には10人とものせられていた。



「で、貴様らはなんでここに入れられた」

男の一人を捕まえてアレクが言った。


「貴様ら白人共に、村を襲われて多くの男が殺されて女どもは犯されたんだよ」

「生き残った俺達は奴隷として売られるのを待っているんだ」

男たちが怒って言った。


「なんだ、それは、新大陸は野蛮なんだな」

ジャンヌが言う。聞いていたが、実際に目にするのとは大変な違いだ。


「何言ってやがる。貴様ら白人がやったことだろうが」

「お前は馬鹿か。白人も貴様らモンゴロイドも単なる遺伝上の一部が違うだけで人類なのは同じだ。そんなの千年前には常識だぞ」

男の問にジャンヌが言う。ジャンヌに馬鹿って呼ばれるのは男も嫌だろうが。


「そうだ、現にシャラザール様は人種に寄る差別は一切されていない。たしかこのあたりにシャラザール様の子孫が開かれた王国もあるはずだが」

「肌の違いで差別するのは馬鹿だけだ。馬鹿な私でも知っているのに、何をやっているんだ」

「貴様ら何言ってくれる。それで殺された俺の家族はどうなるんだ」

「そうだ、貴様ら白人がやったことだろうが」

男たちはいきり立っていった。


「だから、今回戦神シャラザール様は新大陸の蛮状を憂慮され我々を派遣なされたのだ」

アレクの言葉にインディオたちはキョトンとした。


「何言っているんだ。どうするつもりだ」

「そうだ、敵は何十万もいるんだぞ」


「すでにシャラザール様はアツチラ島でホワイテアの大軍を殲滅されている」

「はっ」

「シャラザールってそもそも伝説上の人物だろう」

「貴様らは無知じゃの。旧大陸では魔王を始め多くの悪逆非道の行いをしている者共が成敗されておるのを知らないのか」

アレクが言う。


「シャラザール様は他人任せを嫌われる。今回私達がここに来たのは一緒に立てと貴様らに神の言葉を伝えに来たのだ」

「そんな、ここには1万もの兵士がいるんだぞ」

「高々1万だろうが。貴様らが立つつもりならば手を貸してやろう」

アレクが上から目線で言う。


「このあたりには奴隷の数は何人いる」

「良くは判らんが5千人入るはずだぞ」

「よし、上等だ」

「おい待て、勝てるつもりなのか」

男の一人が言った。


「俺はボフミエ魔導国の外務卿、アレクサンドル・ボロゾドフだ」

「それがどうした」

「いや、待て、アレクサンドル・ボロゾドフってノルデイン帝国の皇太子」

「あ、赤い死神」

「ヒィィィぃ」

男たちは後ずさった。

赤い死神の蛮勇は未開の地の新大陸にまで響いているようだった。


「よく知っているじゃないか。ついでにこいつは暴風王女だ」


「えっ、あの赤い死神と互角に戦ったっていう、マーマレードの怪物か」

そう言った男はジャンヌに思いっきり殴られた。


「そう言うことだ。例え1万の軍だとしても我らがいれば問題ない」

「覚悟は良いか」

ジャンヌは剣を構えて言った。


「おいっ、貴様ら何を騒いでいる」

一人の兵士が外から注意してきた。


世に言うビックゲートの大乱が起こった瞬間だった。

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