第38話 赤い死神と暴風王女は奴隷収容所を開放しました

「おいっ、貴様ら何を騒いでいる」

一人の兵士が外から注意してきた。

「いいところに来た」

言うやジャンヌは男を牢の中に引きずり込んだ。

「えっ、ちょっと」

男はわけが判らなかった。牢の外にいたのに、いきなり中にいたのだった。


あっという間に武装解除され、それも素っ裸な剥かれ縛り上げられていた。

「そこのお前、兵士の服を着ろ」

一人にアレクが命ずる。


兵士に化けて奴隷を開放していき、混乱を起こさせてどさくさに紛れて司令部を急襲して占拠しようとアレクは考えたのだ。


牢の鍵を取り上げてその兵士に成り代わったインティオに渡す。


「おい、どうしたんだ」

しかし、物音に気づいた他の兵士が駆け寄って来る。


「貴様ら何をしている」

牢の中を見て兵士は笛を吹こうとした。


ジャンヌはその兵士に衝撃波を放った。

「おい、止めろ」

アレクが止める間もなかった。


牢の格子戸自体が吹き飛んだ。当然看守も吹き飛んでいた。

アレクの立てた計画も隠密性も一瞬で吹き飛んでいた。


いきなり警報が鳴り出す。


「ほら見ろ。ジャンヌどうするつもりなんだ」

アレクが怒って言う。

せっかく考えたアレクの計画が台無しになった。


「どのみちバレるのが早いか遅いかの違いだけだ。行くぞ」

嬉々としてジャンヌが飛び出した。ジャンヌにとって計画なんてその時々の情勢に合わせて立てていけば良いと思っていた。出たとこ勝負が作戦だった・・・・・・


「ちっ、おい、待てよ、ジャンヌ」

アレクはジャンヌを追って行こうとする。


「おい、俺らは」

牢の中のインディオが慌てて叫ぶ。

「お前らは牢を開けて奴隷たちを出せ、反乱だ。この辺り一帯を開放する」

アレクはそう言うと駆け出した。


ジャンヌは駆けてきた兵士たちの一群に向けて衝撃波を放つ。


一団は一瞬で弾き飛ばされた。


「どけーーーー」

次いで続く兵士たちにジャンヌは剣を抜くと切り込んだ。


「おいっ、待てって」

剣を抜いてアレクも慌てて追いかける。


「おいっ、助けに来たぞ」

アレクらの後に解放されたインディオたちが牢を開けて奴隷達を次々に開放していく。


「どうなったのだ」

この奴隷収容所の警備司令部で、騒ぎに慌ててやってきた寝起きの大隊長が叫んでいた。


「奴隷が逃げ出したようです」

「何だと」

「スパイか何かが潜り込んだようです」

「直ちに援軍を呼べ」

大隊長が叫んだ時だ。


その瞬間ジャンヌの放った爆裂魔術が司令部を直撃した。


ズカーン。


凄まじい爆発の後、誰も立っているものはいなかった。その一瞬で指揮系統が破綻した。




後は掃討戦だった。

30分の死闘で、ジャンヌらは奴隷収容所を開放していた。

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