第33話 大国皇太子はやっとクリスに会えたが、ペットの怪鳥に馬鹿にされました

オーウェンは必死に窓の外を見ていた。

後少しでクリスというか、シャラザールが転移していったカロンの街だ。


ホワイテアの大軍はシャラザールの前に殲滅させられたと聞いているが、クリスが無事かどうかとても気になっていた。


オーウェンはシャラザールにほって行かれてから、直ちにドラフォードの大使館に行き、オロン島の国王に強引に面談させて、発射基地の建設の許可をもらったのだ。その後テレーゼに連絡、直ちにボフミエから技術部隊をスカイバードで召喚。発射基地の材料を島内外で集めて7日間で完成させて、ここまで飛んできたのだ。



「おい、巨大な鳥が飛んでいるぞ」

誰かが叫んだ。

慌ててそちらを見ると怪鳥が飛んでいた。そして、その鳥には人が乗っていた。


「クリス!」

その一人はクリスに似ているように見えた。

でも何故、鳥に乗って空を飛んでいるんだ。

オーウェンには理解できなかった。


しかし、次の瞬間、怪鳥からの攻撃をスカイバードは受けていた。

凄まじい衝撃と振動で振り回されて、オーウェンは意識を失っていた。



が、凄まじい振動でオーウェンは目を覚ました。


その振動が終わった時、なんとか、不時着に成功したことをオーウェンは知った。

クリスのことを気にしすぎるあまり、クリスの幻を見たようだった。

オーウェンは慌てて、外にでる。


スカイバードは周りの木々を倒壊させながら、不時着していた。



その傍に怪鳥が降り立つ。


オーウェンらは慌てて剣を構えた。


それを見て、怪鳥が攻撃しようとするが、


「お座り!」

と言う大きな声がして、怪鳥は座り込んだ。


そして、その上から夢にまで見た女性がひらりと地上に降り立った。




「クリス」

オーウェンがその姿を見て呆然とする中、

「姉さま」

ウィルがそのオーウェンを弾き飛ばして、クリスに駆け寄る。


「えっ」

喜んで飛んできたウィルにクリスは固まる。


そして、その後ろから怪鳥が

「ギョェェェェェェェェェェ」

と鳴いて威圧する。


「えっ、姉さま。俺だよ。弟のウィリアムだよ」

必死にウィルが言うがクリスは戸惑ったままだった。


「モニカ」

その後ろからダビッドが鳥の上にいるモニカに駆け寄った。


「ダビッド」

「良かった。無事だっだんだ」

ダビッドがモニカの手を握って言った。


「そう、シャラザール様に助けていただいたの」

「間に合ったんだ。良かった」

モニカの言葉に心配していたダビッドは喜んで言った。


「クリスティーナ・ミハイル様。遅くなって申し訳ありません」

クリスの前にはアルバートはじめメイやナタリーが跪いていた。


「すいません。私記憶が無くなっていて、よく覚えていないんですけど」

それをクリスは戸惑っていた。


「本当ですか。私のこともお忘れですか」

アルバートも驚いて言う。


「クリス、大丈夫なのか」

起き上がったオーウェンも慌ててクリスに駆け寄る。


「嘘だ。姉さま。弟の僕の事も忘れたの?」

手を握ろうとしたオーウェンの手を叩いてクリスに触らせ無かったウィルが聞く。


「ごめんなさい。良く判らなくて」


「すいません。皆さん。私がシャラザール様に助けられて気がついた時にはシャラしかいなくて、その時には記憶をなくされた状態でした」

横からモニカが言い出した。


「貴方は」

オーウエンが聞く。

「申し遅れました。このドグリブ王国の王女モニカ・ドグリブと申します」

「私はボフミエ魔導国内務卿のオーウェン・ドラフォードと申します」

「ドラフォード?」

「モニカ。こちらはドラフォード王国の皇太子殿下でもあられられるんだ」

「えっ、あの大国のドラフォード王国の」

モニカは驚いた。


「そして、こちらのお方がボフミエ魔導国の筆頭魔導師様でシャラザール教の教皇でいらっしゃるクリスティーナ・ミハイル様だよ」

ダビッドがクリスを指して言う。


「えっ、私はボフミエ魔導国の筆頭魔導師なのですか」

クリスは驚いて言った。


「そうだよ。姉さまはそちらの王女殿下が生贄にされるのを許さないって言ってダビッドを連れて助けに行こうとしたんだけど、そちらのバカ皇太子が付いていこうとして、姉さまにすがりついたので、姉さまが途中で魔力切れを起こして気絶したんだ。それでシャラザールが現れて、そちらの王女を助けたって事になったと思うよ」

ウィルがオーウェンの方を白い目で見ながら言った。


「えっ、じゃあ私が意識を失うと、シャラザール様が来臨されるということですか」

「えっ、いや、しまった、言っちゃった」

クリスの言葉にウィルは蒼白になった。シャラザールには秘密にするように言われていたのだった。


「まあ、基本はそうなる。君はシャラザール様の子孫の中では一番シャラザール様の血を濃く受け継いでいるそうだ」

オーウェンが言った。


「そんな恐れ多いです」

クリスは戸惑っていた。


「クリス様。とりあえず、ここからは私共クリス様の騎士が御身をお守りさせていただきます」

アルバートが跪いていった。


「ところでクリス、後ろの鳥は何なの」

オーウエンが尋ねる。


「こちらはギャオちゃん。私のお友達なんです」

「ピー」

ギャオちゃんはクリスに鳴く。

クリスは嬉しそうにその顔を撫でた。


その様子にオーウェンは切れる。

俺ですらクリスになかなか触れることが出来ないのに、なんて鳥だ。


オーウェンは睨みつけると


「ピー」

意地悪そうにギャオちゃんはオーウェンを見るとクリスの顔に頬ずりした。


「おのれ、鳥のくせに」

オーウェンはギャオちゃんをクリスから遠ざけようとしたが、顔を振られて嘴が当たって弾き飛ばされた。


地面に叩きつけせられる。


「おのれ、鳥畜生め」

オーウエンが今にも突っかかっていきそうな姿勢を示すと

「ピー」

怯えたようにクリスにすがりつく。


「まあ」

クリスはギャオちゃんを更に撫でる。


「すいません。オーウェン様。躾がなって無くて」

そうクリスが謝る。


そうクリスに言われればオーウェンは何も言えなかった。

ギャオちゃんはクリスに隠れていかにも馬鹿にしたようにオーウェンを見下げた。


オーウェンは歯を食いしばって耐えるしか無かった。


(おのれ鳥化け物め。いつか必ず目にもの見せてくれるわ)

オーウェンは心に誓うしか出来なかったのだった……

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