第32話 怪鳥は出会い頭にスカイバードを撃墜しました。
クリスは魔の山を消滅させたことにいたたまれなくなって、すぐにギャオちゃんを連れて旅立とうとした。
「いや、だから、私は遠慮したいんだけど」
必死にモニカは逃げ出そうとしたが、
「そうは言っても、私じゃ地理とかわからないですし、ここまで連れてきたのはモニカ様じやないですか」
必死に抵抗するモニカもシャラにこう言われると断りようも無かった。
真っ青な顔のモニカを前に乗せて、クリスは頼んでつけてもらった手綱を取る。
「殿下ご無事で」
女長官が言う。
無事に着けるんだろうか、モニカの頭の中は不安だらけだった。
しかし、自分の不安は置いておいて、
「あなたも頑張ってね。後のことは頼んだわ」
かろうじて笑顔で言う。
「お任せ下さい。いざという時はたとえ一兵卒になったとしてもこの城を守ります」
神妙に女長官は言った。
「そこまでしなくても良いわ。いざという時は降伏して」
「降伏してホワイテアの兵士共の慰みものになるくらいならば戦います」
「・・・・・・」
そう言われるとモニカとして答えようがなかった。
それを見てクリスが思わず言った。
「女長官様。そのような蛮行は戦神シャラザールが一番嫌われることです。そのような蛮行を行っていた蛮族共はシャラザール様が浄化されたのです。もし、あなた方にそのようなことを蛮族共が行うことがあれば、魔の山を消し去った私の力の全てをかけて蛮族共を始末いたしましょう」
「はっ。そのようにおっしゃって頂けるなど、ありがたき幸せでございます」
女長官は平伏しそうな勢いで頭を下げた。
シャラザールの化身のクリスがそう言ってくれるならばそうしてくれるのだろう。感動して女長官らはクリスを見た。
「すいません。いらぬ口を挟んでしまいました」
「いえいえ、シャラ様がそう言って頂けるならば、それに越したことはございません」
クリスの言葉に女長官が言う。周りの侍女や兵士たちも皆頷く。
「では皆様。どうもありがとうございました」
「シャラ様もお元気で」
残った女子供老人たちに見送られてクリスらは飛び立った。
途中で国王の軍の頭上でギャオちゃんに叫ばしてエールを送ったりした。
サボろうとしていた国王らは度肝を抜かれてまた慌てて歩き出した。
休んでいる兵士たちを見る度にギャオちゃんは叫んでいた。
それを見て慌てて兵士たちが歩き出した。
それは全てさっさと歩けと言う脅迫にしかならなかったのだが・・・・・。
クリスは疲れた皆をギャオちゃんが元気づけているとしか思わなかった。
効率よく兵士たちの尻をたたきながらクリスらはカロンの街の上空に差し掛かった。
そして、
「ギョェェェェェェェェェ」
ギャオちゃんが威圧の叫び声を上げる。
「どうしたの、ギャオちゃん」
半分気絶しているモニカに代わってクリスが聞いた。
「ピー」
ギャオちゃんが嘴で指す方向に黄色い機体が見えた。
「えっ、空を飛んでいる」
それは到底鳥には見えず、巨大な鉄の塊に見えた。
普通はそのようなものが空を飛ぶのは信じられなかった。
「あれっ。どこかで見たことがあるような」
しかし、クリスには見覚えがあった。
「おいっ。何か近づいてくるぞ」
操縦士に人手不足で副操縦士としてついているアルバートが叫んだ。
「でかい怪鳥です」
「これってなにか武器を積んでいるのか」
「そんなのあるわけ無いでしょう」
操縦士は速度をあげて逃げようとした。
スピードをあげたスカイバードの行動は、ギャオちゃんは敵対行動に入ったとしか認識されなかった。
空の王者ギャオースに対抗する新たな敵に見えたのだ。
「ギョェェェェェェェェェェ」
ギャオちゃんは叫ぶといきなり音波攻撃をした。
「ちょっとギャオちゃん待って」
クリスが止めたが、それはスカイバードの機体を弾き飛ばしていた。
錐揉み状態で落ちていく機体をクリスは呆然と見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます