第31話 白人皇帝は次の手を考えました
ホワイテア帝国。建国は150年前と比較的新しい国だ。位置は新大陸の東北部を占めていた。ホワイテア帝国は多くの奴隷インディオを貴族の荘園等で働かせており、それがシャラザールらの激怒をかっているのだが・・・・
その帝都、ホワイトンの宮殿で皇帝ヘルッコ・ ヴィーナネンは怒りに震えていた。
「どういうことだ。ユレルミ!アッチラ侵攻軍の主力10万が消滅したというのは」
「はっ、申し訳ありません。現在詳しい情報は集めている段階ですが、なんでも、シャラザールなる魔術師が魔力で攻撃したとのことです」
「魔力攻撃で10万もの大軍が全滅するわけはないだろうが」
「申し訳ございません」
ユレルミ・ムーリ大将軍は謝るしかなかった。
「現場も大変混乱している状況でして詳しい状況はまだ掴めておらぬ状態です」
「陛下、影から詳しい情報が入ってまいりました」
補佐官のウルヤナ・ ピーリが皇帝にささやく。
「なんでも、その女は戦神シャラザールを語っておったと言うことです」
「シャラザールは旧大陸の伝説の戦神ではないか。そんな者の名前が何故出て来る?」
皇帝の疑問に答えられる者は誰もいなかった。
「元々ドグリブの王家はシャラザールの子孫を称しておるそうでございます」
「しかし、戦神シャラザールは我々と同じ白人だと聞いておるぞ。白人の子孫が何故モンゴロイドのインディオの子孫になるのだ」
補佐官の話に皇帝は納得いかないようだった。
「それを言い出すと我ら偉大な白人の子孫も野蛮なモンゴロイドの子孫も同じということになるぞ」
「本当でございますな。なんとも恐れ多いことを」
「まあ何しろ野蛮人の考えることでございますから」
「左様でございます。所詮肌の色の汚い蛮族の考えるですから」
「ま、そうじゃな。肌の色の違う者共の考えることじゃからの」
側近共の言葉に皇帝は納得した。
「で、そのシャラザールなるものですが、カロンの街を包囲中のアッチラ攻略軍のど真ん中に巨大爆裂魔術を現出させて、我軍を消滅させたとのことでございます」
「そんなバカな」
皇帝はなかなか信じられなかった。
「大方は地下に魔導爆弾等を埋めていて同時爆発させたのではないかと思われますが」
宰相のテイヨ・ナラネンが申奏した。
「そうじゃな。そう考えるのが妥当じゃ。で、そのシャラザールなる者はいかがしたのじゃ」
「直ちに魔導部隊を攻撃に向かわせております」
ユレルミ大将軍が答えた。
「ドグリブなどの下等種族に手こずるなど信じられぬな」
皇帝は下唇を噛んだ。アッチラ島に15万の大軍を集結し1年以内に全アッチラ島を数に物言わせて制圧しようと目論んでいたのだ。それが主力の10万が無くなったとなると早急に対策を考えねばならない。
「しかし、10万の軍が消滅したということは現場は5万も残っておりますまい。いかがなさいますか」
宰相が皇帝に確認する。
「援軍は送ってやらねばなるまいが、全戦力の半分をアッチラ島に向けたのじゃ。引き抜ける軍があるか」
「西部戦線ではスウ族の攻撃が激化していると、現地からは援軍の要請が上がってきております」
「そちらは西部戦線に任せる。取り敢えず、アッチラを早急になんとかしたい。ユレルミ大将軍。帝都とその周りの軍をかき集めて5万の大軍を準備、その方を中心としてアッチラ攻略を命ずる」
「しかし、それでは帝都の防衛が薄くなりませぬか」
宰相のテイヨが危惧する。
「近衛がおればなんとかなろう」
「判りました」
テイヨは多少の不安は目をつむるしか無かった。
「ユレルミ、頼んだぞ」
「御意」
皇帝の言葉に大将軍ユレルミは跪いた。
しかし、彼が島に行きつくことはなかった。
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