第27話 後方でのほほんとしているインディオ国王達は戦神の逆鱗に触れました

「しゃ、シャラザール様」

国王はあまりの威圧感に椅子ごと後ろにひっくり返っていた。


「貴様がこの国の国王か」

シャラザールが国王の方を見て言った。


「はい。ミゲル・ドグリブでございます」

慌てて国王はシャラザールの前に跪いた。


「なるほど、この国には貴様のような成年男子がまだたくさん残っていたのじゃな」

周りを見渡してシャラザールは不思議そうに言った。


「当然でございます」

国王は何故そんな事を言われたのかと不審に思ったが、次のシャラザールの言葉に青くなった。


「最前線の街では女子供と老人しかいなかったように思ったが」

「それは最前線の砦が落とされて、残りが女子供老人だっただけで」

「では貴様らは何なのだ。幽霊なのか?」

「まさか。我々は王都でホワイテアの進軍に対処しておったわけで」

国王は愛想笑いをして言った。


「そうか、それで、貴様らが見捨てたおかげて、その方の娘が磔で殺されようとしていたわけだな」

「いや、我々は決して娘を見捨てたわけでは」

「後方に居て威張りくさっておるのではないわ」

そう言うやシャラザールは思いっきり国王を張り倒していた。

国王は後ろで頭垂れている貴族達の中に飛んで行った。多くの貴族達が一緒に弾き飛ばされた。


「何で国王自ら前線に立って指揮をとらん。そこの貴様。何でここにのほほんとしておるのじゃ」

シャラザールは近衛のトップと思しき男を捕まえていった。


「私は近衛でありますので、王都の防衛を」

「愚か者」

そう叫ぶとその近衛師団長をもシャラザールは張り倒した。


「女子供老人を最前線に立たす将軍がどこにおるのじゃ」

シャラザールは皆を見回した。


「そこの貴様」

シャラザールは今度は貴族の親玉みたいな偉そうな男を指差した。


「はいっ」

おっかなびっくりで貴族は前に来た。


「貴様はなんでここにおるのじゃ」

「何でと言われましても、戦いは兵士の仕事ですから」

「愚か者」

シャラザールは男を張り倒していた。


「貴族たるもの、平民の女子供老人を守るためにおるのだろうが。後ろで見守っているだけならば貴族でいる必要は無いわ。今すぐ爵位を返納せよ」

「そ、そんな」

貴族達が真っ青になった。


「なにかあるのか」

シャラザールは皆を睥睨してみた。


「よくもまあ、宴会を開く余裕があるよな。前線では女子供が援軍が来るのを今か今かと待っておるのに」

シャラザールの強い視線に抗える強者は誰もいなかった。


「国王。ミゲルよ」

「はっ」

シャラザールの声に国王はよたよたと前に来た。


「貴様に命ずる。直ちにここにいる愚か者共全軍を率いて、カロンの地に赴き、カロンの砦を取り戻せ」

「そ、そんな」

ミゲルは呆然とした。


「返事はどうした!」


「はっ直ちに」

シャラザールの声にミゲルは平伏した。


「余の言葉に逆らうものは領地爵位没収の上1兵士として最前線に立たせる。好きな方を選べ」

「えっ、そんな」

思わす漏らした貴族の男にシャラザールは睨みつけた。

どちらにしろそれは最悪だった。というかどのみち前線に立たされるなら貴族として出陣したほうが余程ましだった。


「死にたいのは貴様か」

シャラザールが文句を言った貴族の方に一歩踏み出す。


「いえ、滅相もございません」

貴族は慌てて平伏した。


「期限は10日。10日以内に砦を奪還するのじゃ」

「そ、そんな」

近衛師団長が青くなった。


「余程貴様は死にたいようじゃの」

「い、いえ、そんな滅相もございません」

師団長は震え上がった。下手したら殺される。


「なら即座に出撃せよ」

「はっ、判りましてございます。全軍国王陛下の名のもと直ちに出撃いたします」

慌てて近衛師団長は出て行った。


「貴様らは何故まだ、ここにおる」

残りの貴族らにシャラザールは一にらみした。


「ヒィィィィィィィィィぃ。直ちに参ります」

貴族達は慌てて出て行った。


「余も最後に出陣する。一兵士になりたいやつは申告せよ。働きの悪い奴は降格、下手したら1兵士に落とすからな」

シャラザールの大声が後ろから追ってきた。


城内は出陣の準備で大混乱に陥った。

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